令和時代のヤクザ社会を追い続ける鈴木智彦氏

ヤクザ“家計”までも研究する鈴木智彦氏

溝口:特に今、暴力団に対する刑罰っていうのは重くなっているんですね。そのために、組としては服役した者へのケアが重要になる。

 五代目山口組組長の渡辺芳則がまだ直参の山健組組長だったころ、傘下組織の組員が服役した場合、山健組と傘下組織から1か月に計50万円が渡され、さらに渡辺自身からも家族に生活費を送り、盆と正月には100万~200万円を別途送っていたと言っていた。「3年かそこらしたら3000万円か4000万円は集まってしまう」と、面倒見の良さを誇っていました。

鈴木:抗争における報酬、賞揚禁止というのは警察の手前、表向き守られていますが、実際には当然ある。家を買ってあげたり、車を買ってあげたり、現金をあげたり。一概には言えませんが、最低でも1億は要る。ただし、実際には今その口約束を履行してくれる組織はほとんどないですが。

【プロフィール】
溝口敦(みぞぐち・あつし)/ジャーナリスト。1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』など。

鈴木智彦(すずき・ともひこ)/フリーライター。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。

※週刊ポスト2021年4月16・23日号

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