恋人役は、大竹しのぶだった。

「あの頃、しのぶちゃんとはかなり共演しましたね。『青春の門』に大河ドラマ『花神』、映画『衝動殺人 息子よ』も婚約者役でした。あの人は本当に上手かった。浦山さんも相当気合いを入れて演出していました。まるで催眠術でもかけるみたいに。そうやって絶対の信頼関係を築いていました。しのぶちゃんは浦山さんの演出方法にめちゃくちゃはまっていました。

 普通、撮影が終わると『カット!』と言います。でも、しのぶちゃんがブワーッと芝居をすると、監督は『よっしゃー!!』って叫ぶんですよ。そう言われたら、誰だって嬉しいものです。

 僕も『よっしゃ!』が来ないかなと思ってやっていましたが、結局一回もなかったですね」

【プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。

撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2021年4月30日号

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