2017年3月以来、4年間ゴールを決めていない
11月16日のイランとの第3代表決定戦では、先発出場するも後半18分に交代でベンチに下げられ、代わりに入った22歳の城彰二が同点ゴールを決め、日本は岡野雅行のVゴールでフランス行きを決めた。いわゆる“ジョホールバルの歓喜”だ。一方でカズには“限界説”が唱えられ、世代交代論が巻き起こるようになる。当時、一連の報道について聞かれたカズは、こう話している。
〈マスコミはそういうふうに煽っているけど、俺は自分を信じている。他人がどうこうではなくて、自分自身がやってきたことに誇りを持って戦えばいいわけだから。別にマスコミと戦っているわけじゃない、自分と戦っているわけだから。自分に負けたら負け、勝ったら勝ち、ここまでやってきたことは誰にも変えられない〉(1998年5月号『ストライカー』)
強靭な精神力でバッシングに立ち向かったが、流れは変えられなかった。1998年になると、岡田監督は城をフォワードの柱として起用。5月のキリンカップでは、スタメンはおろか、出場機会すらなかった。そして6月2日、25名から22名に最終メンバーを絞る際、「城をFWの柱と考えているので、残りのFWをどうするかと考えると、使うチャンスがない」とカズの落選を決めた。すると、バッシングの矛先は岡田監督に向き、日本が予選3戦全敗で終えると、「カズがいれば……」と今まで散々批判されていたカズを惜しむ声が上がった。
あれから23年経っても、54歳のカズはJ1横浜FCで現役生活を続けている。もしフランスW杯に出場していれば、既に現役を引退していたのではないかという推論は頻繁に囁かれる。しかし、2019年2月17日の NHK『サンデースポーツ』で、カズは大越健介キャスターの質問に対し、キッパリと言い切っている。
大越:あの時、フランス大会に出ていたとして、今も現役を続けていますか?
カズ:いたと思います。ずっと続けてると思いますね。自分自身、もうサッカーが大好きなんです。
カズはJ2時代の2017年3月12日の群馬戦でゴールを決めて以来、得点を挙げていない。50代でプロサッカー選手を続ける偉業を褒め称えられる一方、出場機会の少ない最近は風当たりも強くなっている。批判の声を黙らせるには、ゴールしかない。長年の経験で、カズは誰よりもそうわかっている。