そんなわけだから、「法律を改正して夫婦別姓を認めよ」という訴えは、わかるようでわからないんだよね。

 職場で姓を変えると仕事に差し支えるというけれど、私の周囲では、旧姓のまま呼ばれている人もいるし、新しい姓を名乗りたい人は新姓を仕事仲間に伝えて、そのうち落ち着く。戸籍と呼び名が違っていたところでどんな不自由があるのか。

 ていうか、「実家の姓を絶やすわけにはいかない」とか「お墓を守っていかないと」と熱く語る人がいると、言外に「わが家はそういうお家柄なのでよろしく!」と言われた気がして、「ふ〜ん、そうなんだぁ〜」と後ずさりしちゃう。

 …それにしても、60才を過ぎたら、友人・知人から聞く話の半分以上が相続争い。きょうだい同士で原告・被告は当たり前。親が子を、子が親を訴えたりして、聞いているだけで切なくなっちゃう。

 その元凶に「○○家の跡取り」という目に見えない制度があると思うのよ。長男が「かまどの灰までオレのもの」という振る舞いをしていたり、逆に「跡取りだから」と、家業や親の介護などの面倒ごとを跡取りに全部押し付けておいて、いざ相続になったら「寄こすものを寄こせ」と颯爽とほかのきょうだいが現れる。そうしたことから骨肉の争いが始まる。

 だいたい、人間関係に法律が出張ってくるときはロクなときじゃないけど、その最たるのが相続だと思う。

 紀州のドン・ファンこと野崎幸助さん(享年77)の急死後、元妻(25才)が13億5000万円を相続できるかどうかに注目が集まっているけど、亡くなる1日前でも入籍していれば、妻に莫大な額の遺産が相続される(かもしれない)というのはウルトラスーパー離れ業だ。

 和歌山であの人が何をしたかはこれから明らかになると思うけど、やらないだけで、夫の財産をがっつり相続することを夢想した中高年女性は私だけじゃないと思うわ。

 夫婦別姓の法律が変わったら何が変わるのか。日本人のDNAレベルにまで入り込んでいる「○○家の跡取り」という意識が変わることはないと思うけど、その一方で、人知れず入籍しちゃって、ちゃっかりと……という悪だくみをする輩は増えそうな気がするんだけどな。

※女性セブン2021年6月17日号

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