10代の岡田将生の演技も見られる

早くからメキメキと頭角を現した(撮影/矢口和也)

 岡田といえば、映画やドラマ、CM、さらには舞台にと、デビュー以来見かけない日はない活躍が続いている。ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)で好演したひねくれ者の弁護士役が記憶に新しく、7月11日からは、Bunkamura・シアターコクーンにて主演舞台『物語なき、この世界。』が幕を開けるところだ。キャリアを重ねるにつれて、各作品における岡田の重要度は大きくなっている。どこか浮世離れした人物や、いわゆる“小物キャラ”、神経質な青年などは彼の得意とする役柄で、先述の『大豆田とわ子と三人の元夫』をはじめ、直近の出演作にもこの傾向が見られる。そして、本作『Arc アーク』で演じる天音役もこれに該当するのではないかと思う。

 彼が演じるのは“不老不死”の技術開発をする天才科学者。自然の摂理に反する不老不死に挑む人物とあって、いかに変わり者であるか分かるだろう。これを岡田は、終始浮かべる不敵な笑みと、抑揚を抑えたセリフ回しで表現している。常に冷静でどこか人間味の薄い、やや風変わりなキャラクターは、本作のフィクショナルなテーマの一部分をも体現しているようだ。それでいて、リナとの“関係性の変化”に合わせて変化する天音の人物像にも注目である。

 近年の岡田は“どこにでもいるようなごく平凡な青年”の役から遠ざかっているが、なぜこうも変わり者を演じられる俳優として愛されるのか。それはデビュー以来、同系統の役ばかりでなく、例えば好青年とはほど遠い人物を演じた映画『告白』や『悪人』など、早い段階から演技の幅の拡張に挑んできた点が大きな理由として挙げられるだろう。俳優としての可能性の限界を定めない姿勢が、常に観客に驚きを与えてきた。

 結果、今の“性格派俳優・岡田将生”があるのだ。『Arc アーク』の石川慶監督だけでなく、8月に公開を控えている映画『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督など、国内外で高く評価される監督らの作品に引っ張りだこである事実が、岡田の力量を物語っている。ちなみに、舞台『物語なき、この世界。』では、虚無感を感じさせるような“売れない役者”という等身大の若者役に扮するようだ。これを今の岡田がどう演じるのか、あれこれ想像するのも一興だ。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

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