手代木社長

塩野義製薬の手代木社長(写真/共同通信社)

 ただしワクチンの効果は欧米製より劣ると想定される。

 接種で感染リスクがどれほど減ったかを示す「有効率」は、ファイザー製が94.6%、モデルナ製が94.1%と報告されるが、シオノギ製ワクチンにそこまでの好成績は期待できないという。

「一般に遺伝子組み換えたんぱく質ワクチンは免疫原性が弱く、有効性が低いとされます。ただその際は、『アジュバント(免疫反応を増強させる物質)』を加えて、免疫反応を高めます。今回も、アジュバントの開発によって有効性が高まることが期待されています」(一石さん)

 血液内科医の中村幸嗣さんは「若者への接種」を勧める。

「シオノギ製のワクチンは、ファイザー製やモデルナ製より有効率こそ低くなる可能性が高いと予想していますが、たんぱく質のため副反応が少なく、安全性が高くなると思われます。このワクチンは、副反応を恐れる若者に接種すれば、副反応が強いリスクと、重症化が少ないためそこまでの感染予防効果が必要ないメリットが釣り合うと考えられます」

 この先、特に接種リスクの大きい若い世代は、シオノギ製ワクチンの承認を待つという選択肢も出てきそうだ。

 日本製ワクチンの登場が影響するのは若者だけでない。新型コロナの流行は今年終息するとは限らず、この先はインフルエンザワクチンのように毎年接種することになるかもしれない。その際に、安全性の高いとされるシオノギ製ワクチンが選択肢になることが望ましい。

「現在のワクチン市場は寡占化されていて消費者に選択肢がありませんが、シオノギ製ワクチンが実現すれば、製薬会社間で競争が生じ、ワクチンが改善されやすくなります。改善が進めば副反応が軽くなり、価格も安くなることが期待できます」(室井さん)

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