2019年、本塁打を放った日本ハムの中田翔(左)をベンチで迎える栗山英樹監督(時事通信フォト)

2019年、本塁打を放った日本ハムの中田翔(左)をベンチで迎える栗山英樹監督(時事通信フォト)

 円陣の件とは別の話だが、中田翔選手が同チームの選手を殴打した暴行事件は球界のみならず社会に衝撃を与えた。球団は被害をうけた具体的な選手名を公表していないが、井口和朋選手(27歳・投手)ではないかと言われている。こちらはいじりではなく暴力、そして重ねるが中高生の部活の話でなく日本のトッププロリーグの話である。

「ヤンキー系の先輩というのがとくに怖い。それでレギュラーなら無敵です。私の高校でも暴君のように振る舞ってました。パシリはもちろんケツバット、部室で1年生全員に全裸になれと命令したり、それでタコ踊りしろとか、それなりの強豪校でしたが教育(筆者注:人間形成などの一環として野球に打ち込むという意味の教育)なんて口だけ、そんなもんです」

暴行傷害や殺人なのに部活だと不祥事

 高校野球の不祥事、とくに暴行事件といえば枚挙にいとまがない。2011年の青森山田高校事件などは上級生部員による暴行で死人が出た。近年でも2019年に10校、2020年にも9校が暴力事件などにより日本学生野球協会から処分を受けている。

「ただの暴行傷害とか殺人なのに部活だと不祥事なんです」

 憤る関田さんの言い分はもっともで、これは筆者が『小山田圭吾辞任でトラウマ蘇った30代男性の告白「いじめは校内犯罪である」』でも言及したが、一般社会では犯罪なのに学校では「いじめ」と呼ばれる。同じように部活における上級生による暴行罪や侮辱罪は前者が「かわいがり」、後者が「いじり」とされる。これもまたれっきとした校内犯罪であり、一般社会では犯罪である。しかし部活となればあくまで「不祥事」となる。

「まさかプロ野球なんて頂点でそんなことが起きるなんて思いませんでした。そりゃ血気盛んですから思い余ってというのもあるし、同じ釜の飯を食った仲なら揉めることもあるでしょう、でもあんな円陣や暴力を見たら、せっかく野球をやってくれる子どもたちがどう思うか、ほんと考えて欲しいです。いま野球やってくれる子って少ないんです」

 関田さんは高校時代レギュラーでなく、甲子園出場もスタンド応援側だった。中学時代まで不動のレギュラーでも、強豪校に行けば大半はその他大勢になる。

「ひどいものでした。レギュラーでなければ人間扱いされないような高校でした。レギュラーになれずに荒れて中退する部員もいました。昔の野球学校なんてそんなもんです。いい意味でも悪い意味でも、野球バカの集まりですから」

 あくまで関田さんの意見であるし学校にもよるだろう。だが筆者もそうした野球強豪校に通っていたからよくわかる。野球部からこぼれ落ちた生徒の中には不良となってカツアゲや暴力を振るう者もいた。筆者の自転車を貸せと囲んで殴る蹴るで奪っていった生徒は、野球部を退部して居場所のなくなった元部員たちだった。彼らは悪い人ではなかった。1年のとき「ここの立ち食いうどん美味しいよね」と荒川沖駅で声を掛けてくれたのも、一緒に食べてくれたのもその元部員の一人だった。野球部を退部してから荒れて、そうした行為に及ぶようになった。いまは知らないが、そんな時代があった。こんな悲劇を繰り返してはならない。野球エリートでも、まだ10代の子どもである。優勝劣敗にはまだ早い。

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