2009年、米カリフォルニア州ロサンゼルスの動物保護施設で新たな飼い主を待つチワワ。当時、同州の保護犬の約3分の1がチワワだった。専門家は、数多くのチワワが捨てられている原因として、経済不況や「パピーミル」と呼ばれる子犬繁殖所、素人による繁殖などを挙げている(時事通信フォト)

2009年、米カリフォルニア州ロサンゼルスの動物保護施設で新たな飼い主を待つチワワ。当時、同州の保護犬の約3分の1がチワワだった。専門家は、数多くのチワワが捨てられている原因として、経済不況や「パピーミル」と呼ばれる子犬繁殖所、素人による繁殖などを挙げている(時事通信フォト)

「まとめて引き取ってもらえれば自治体も文句はない、彼らの仕事はそこまでですから」

 ペットショップ併設の病院勤務の経験もある方なので生体販売にもそれなりに精通している。実際には業者や団体の固有名詞が多く明かされた。確かにフレンチブルドッグやボストンテリアなどの短頭種は赤ちゃんの頭部の大きさから難産で帝王切開が基本となるし費用も掛かる。出産の難しさから数を増やせないことが短頭種の高額化に繋がっている。

「そんな高価な犬がたくさんいたわけですからね、まだ産める母体はまた繁殖犬に使うのでしょう。松本の保健所も警察も(アニマル桃太郎の)私物である犬を引き取ってもらったと言われればそれまでですよ。まして県外業者ならね、むしろホッとしてるでしょう」

 あくまで彼の感想だが、今回の件はただの多頭崩壊ではない、あまりに凄惨な赤ちゃん製造工場に多くの業者や団体、自治体の一部が絡んだ虐待事件である、と受けとめられている。「アニマル桃太郎」の犬舎で繁殖犬は狭いケージの中で座り続けてお尻を腫らし、毛は抜け落ち、かゆがって目を傷つけても放置されていた。施設では赤ちゃんを産めればお母さんは売り物ではないので全身アカラス(毛穴の寄生虫)にまみれて炎症を起こしていても、心臓や肺がフィラリア(糸状の寄生虫)に侵されて苦しんでいても構わない。それが私たちの国、日本に存在する赤ちゃん工場という名の絶望工場の実態である。

 日が傾き、牛伏川に沿ってよりいっそうの冷気が深まってきた。本格的な冬になればこの松本はさらに寒くなる。夏は盆地で厳しい暑さ、何段にも積まれたケージで一生を終えた犬たちは我が子を産み落としながら何を思ったのだろう。人間の欲と金のために利用された子たち、その多くがまたどこへともなく消えた。

「こういう子たちは悪徳ペットショップはもちろん、悪質な団体の譲渡会とか里親会と称した連中の寄付金集めに使われます。行政はまともなボランティアがいくら言っても取り合わないのに連中の言うことは聞くんです」

 旧知の元ペットショップ店員の話だ。動物を金儲けの道具としてしか扱わない悪質な業者の実態について、他の証言者と同じ話に至る。

「血統書付きの犬はお金になります。子犬はペットショップ、親犬は寄付金目当ての譲渡会、良心的な組織の迷惑になるので言いたくないのですが、ペット業界を仕切る連中があやしい協会などを作って暗躍しています。連中が悪いのはもちろんですが、本当にこの国はペット規制に及び腰なんです」

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