「アニマル桃太郎」事務所兼飼育施設だった建物。生まれた子犬はここで引き渡しが行われていたとみられる。

「アニマル桃太郎」事務所兼飼育施設だった建物。生まれた子犬はここで引き渡しが行われていたとみられる。

 2019年6月の改正動物愛護法成立にも日本のペット業界は改正反対のロビー活動を続けてきた。抜け穴だらけは確かだが、これに対峙した環境省はもう少し評価されていい。次の動物愛護法改正(5年後なので2024年)までに国民の意識も含め変わるしかない。それほどまでにペット業界は強力で、ペット関連総市場規模1兆5,705億円の力で政治に食い込んでいる。その力を、建設的な業界の発展ではなく、己の不道徳や不正を見逃してもらうために悪用する人たちもいる。

 規制に対し自由な活動を守ろうとするのは理解できなくはないが、自主規制で自浄できず多くの動物の命が危険にさらされ続けるのであれば、やり過ぎとはならないはずだ。たとえそれが、一部の不埒な人たちによるものであっても、発情期のたびに年に2回、それを10回も繰り返させられるような犬がいるという現実は、やはり正されるべきだろう。実際に規制がゆるやかだったのを悪用して2018年、犬や猫の赤ちゃん工場を運営していた不届きな業者が告発されたが不起訴に終わる、という事件も過去に起きている。

 少しずつ、少しずつ心ある政府関係者や行政、獣医師を中心とした業界、そしてボランティア団体によって現状までこぎつけた、それでもこの松本のような赤ちゃん工場が野放しになっていた。法律に意味をこめても、それを適正に運用することが重要なのだと改めて考えさせられる。

 今回のルポはアニマル桃太郎やその経営者、従業員、ましてその土地をあげつらうことが目的ではない。こうした事件のたびに取り上げ、周知することで悪質な業者による凄惨な「赤ちゃん工場」を駆逐するきっかけになればとの思いである。

「たかが犬猫」と思うなかれ。「たかが犬猫」と「たかが人間」は同一線上にある。いまもまた、時給の限りなく安いであろう何処かの地方で鬼畜が経営する赤ちゃん工場に加担させられる人間と、死ぬまで赤ちゃんを産まされる犬とが声を上げることすらできずに地獄の日々を送っている。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。著書『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)他。

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