富士山の麓を走る新幹線と在来線を抱えるJR東海は、「被害が想定される地域では、列車を進入させない、その地域にいる列車を地域外へ移動させるなどの運転規制を実施します。当社としても、情報収集や勉強を継続しております」(JR東海広報部)という。
富士山にほど近い企業はさらに踏み込んだ対策をしている。静岡市にある建築・不動産会社の小野田産業は、家庭に置く「火山用シェルター」の開発に注力している。同社の小野田良作社長が語る。
「アメリカ国防総省の建物の外壁にも使われているポリウレアという耐熱性の高いコーティング剤を発泡スチロールに塗りつけることで、軽さと耐久性を備えたシェルターを実現しました。広さは5~6人が入れる程度で、津波に襲われても水に沈む心配がなく、ヘリコプターで吊り下げて移動することが可能です。充電式の電池により電力を継続的に使え、理論上は食料品と水が持つ限り生活することができます」
同社はすでに、地震や津波に対応できる防災シェルター『SAM』(150万円)を販売しているが、「火山用」の場合、地震や津波対策用のシェルターよりも、越えなければならないハードルが高いという。
「販売するには『直径10cm、時速300kmの火山弾(噴火の際に飛散する溶岩の一部)を損傷なく跳ね返せるか』という国の基準をクリアしないといけませんが、現状は直径10cm、時速180kmまでが限界です。もうひとつ難しいのが、火山灰や粉塵の進入をいかに防ぐかで、それらが空気に充満する環境下でも完璧に空気清浄できるかが課題です」(小野田社長)
来年3月には再び実験を行ない、1日も早い製品化を目指すという。
※週刊ポスト2021年12月24日号