これまでこういった不幸そうな役は、木村多江さんを代表とするような薄顔美人の専売特許だった。でも比嘉さんを思い出してほしい。沖縄生まれらしく、くっきりとした顔立ちだ。大きな瞳に、キュッとあがった口角。あの凛とした美しさは宝塚でも見たい。

2022年の活躍ぶりが見える

 そして2021年は彼女の女優人生そのものが、一時、混線をした。主演予定だった女優の降板により、急遽、代役を務めることになったのが『推しの王子様』(フジテレビ系)のベンチャー企業社長・日高泉美役。年下男子と盟友との恋に揺れるくらいのこじらせ具合ならまだいい。この作品と同時期に、『にぶんのいち夫婦』(テレビ東京系)で、夫に浮気されているかもしれないという妻・中山文を演じていた。

 で、『日本沈没』では、放送開始当初で夫に離婚を申し入れた天海香織役。どうなるのかと思いきや、その彼女には新しいパートナーがいた。やっと幸せな生活が送れると安堵していた矢先に、パートナーは感染症により死別……2021年を締めくくるのにふさわしい、こじらせ方であった。

 こうして並べてみてふと気づいたことがある。気になった役柄は“あまり女友達”にしたくない絶妙な雰囲気を醸しだしているタイプであること。例えば木村多江さんが演じてきた数々の薄幸そうな役には、孫の代までたたりそうな怨念のようなものがある。避けるというより、そもそも近寄らないし、周囲にはいないキャラクター。でも比嘉さんが演じてきた役は「あ、いるかも。こういう人」と思わせる、悪い意味での親近感がある。役柄によって呆れもされ、愛されもする“こじらせキャラ”は、比嘉さんの明るいビジュアルイメージがあってこそ成立するのではないか。

 それが今回気になった理由の、ひとつの答えなのかもしれない。もちろん、これらも『ケイジとケンジ〜所轄と地検の24時〜』(テレビ朝日系、2020年)の検察事務官の仲井戸みなみ役で見せたテキパキとした役があったうえで……なので、何事もバランスなのだとしみじみ。
 
 新年早々には『緊急取調室 新春スペシャル』(1月3日、テレビ朝日系)に出演。春には個人的にも興味津々で買うであろう写真集が発売と、活躍が見える比嘉さん。来年も多大なるこじらせ役を心よりお待ちしています。

【プロフィール】こばやし・ひさの/エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。近著に『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)。2022年3月に新刊発売予定。静岡県浜松市出身

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