土屋夏彦さんは劇作家・鴻上尚史さんの番組も担当。1989年には、番組でのネタをまとめた書籍『究極の選択:脳みそパニック 他人をダンガイゼッペキに立たせる世界で初めての本』(扶桑社)を発売。大ベストセラーになった

土屋夏彦さんは劇作家・鴻上尚史さんの番組も担当。彼の番組内で、「カレー味のうんこと、うんこ味のカレー、食べるならどっち?」というはがきが来た。これがおもしろいとなり、コーナー化。1989年には、そこでのネタをまとめた書籍『究極の選択:脳みそパニック 他人をダンガイゼッペキに立たせる世界で初めての本』(扶桑社)を発売。大ベストセラーになった

一方で、自分の話のおもしろさを極めていったのが、ビートたけしだったという。

「たけしさんは、自分の周辺で起こったことを話すのですが、これがおもしろい。当時、たけしさんは何冊ものノートを持ち歩き、そこに見聞きしたことを記録していました。いわばネタ帳です。膨大なネタの中から、おもしろい話を緻密に練り上げて、笑いを生み出していたんです」

 そして、ネタも構成もしっかり固めて番組に挑んでいたのが、中島みゆきだった。

「みゆきさんの場合、コーナーが決まっていたので、話の構成を固めてから披露していました。この点はたけしさん的でしたが、自分の話をしない点はタモリさん的でした」

『ANN』は新しい才能の発掘場だった

 土屋さんたちが番組を作っていた頃は、パーソナリティーが有名人であっても、スタッフと対等な立場。パーソナリティーに「おもしろいことはありませんか?」と聞くのではなく、スタッフが、やりたいことを彼らにぶつけていた。双方のアイディアの掛け算で、番組をおもしろくしていったというわけだ。

 また、当時は常に新しい才能を求めており、さまざまなタレントを現場の判断でゲスト出演させていたという。

「それでおもしろければ、新しい『ANN』のパーソナリティーに抜擢していました」

 だからこそ、若き才能が育った。所ジョージ、稲川淳二、坂崎幸之助、明石家さんま……トークのおもしろさに定評があるタレントたちはみな、『ANN』のパーソナリティーを経験している。

『ANN』は、リスナー、パーソナリティー、構成作家……みんなで共に高め合いながら作り上げていたのだ。

取材・文/前川亜紀

※女性セブン2022年2月10日号

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