尾木:ああした番組で問われているのは、東大で学んで培った力ではなくて、中学受験の塾で勉強した知識なんですよ。
茂木:『東大王』といった番組のネーミングも東大生に失礼だと思う。あんなことを勉強しているのかと思われかねない。
尾木:私も別のクイズ番組に出演した際、「発想力や創造力が発揮されるようなクイズ番組はできないの?」と番組スタッフに提案したんですが、一時期、そういう方向でやってみたけど受けなかったんですって。ゲーム性が大事だと。
茂木:正解・不正解がはっきりしていて、ポイントを積み重ねて勝つと。入試と一緒ですね。
尾木:ああいうクイズで持て囃されて、彼らはプライドが傷つかないのかしら。
(第3回へ続く)
【プロフィール】
尾木直樹(おぎ・なおき)/教育評論家、法政大名誉教授。1947年生まれ、滋賀県出身。早稲田大学卒業後、私立高校、公立中学の教師に。その後大学教員に転身し、合計44年間教壇に立つ。「尾木ママ」の愛称でテレビなどのメディアに出演。『「過干渉」をやめたら子どもは伸びる』(共著、小学館新書)など著書多数。
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)/脳科学者、作家。1962年生まれ。東京都出身。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)など著書多数。
※週刊ポスト2022年3月11日号