韓国大統領選挙(3月9日投開票)で接戦の末、第20代大統領に選出された保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏。今後は喫緊の課題となっている不動産価格の超高騰問題やコロナ対策などの内政に力を注ぐことになりそうだが、日本にとっても重要となるのが、尹政権の対北朝鮮政策だ。
ロイター通信は、〈尹氏は強硬な軍事戦略を約束し、北朝鮮の極超音速ミサイル発射が差し迫った場合、対抗する唯一の手段は先制打撃かもしれない、と発言している〉と報じるなど、対話路線だった文在寅政権から一転、強硬路線に舵を切ると見られている。コリア・レポート編集長の辺真一氏が語る。
「韓国の歴代保守政権は、基本的には北朝鮮に対して『圧力と制裁』を重視した政策を実施し、一方で文在寅や金大中などの左派政権は『対話路線』を敷いてきました。政権が代わるごとに、いわゆる保守の北風政策と左派の太陽政策が繰り返されてきたのです。
しかし、北朝鮮はこうした韓国の対応にすっかり慣れてしまっている。そのため、尹氏がこれから打ち出していくであろう軍事的・経済的な『圧力と制裁』がどこまで有効なのかは疑問が残ります。実際、北朝鮮が制裁に屈して核実験やミサイル発射を中止したことは一度もありません」
これまで一向に効果が見らなかった韓国の北朝鮮政策だが、解決へと導くため尹政権は日本を巻き込んだ政策を積極的に打ち出す可能性がある。
尹氏は2月25日に行なわれた討論会で、日米韓の軍事同盟の可能性について言及。その場で、「有事の際、(日本の自衛隊が)入ってくることはあり得るかもしれない」と発言したことが韓国内で大きな波紋を呼んだ。辺氏が語る。
「現在、北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返していますが、ミサイルを乱射すればするほど、それを脅威とする韓国と日本が接近するきっかけになります。これから韓国と日本が北朝鮮問題で距離を縮めていく可能性は十分ありますが、自衛隊が北朝鮮に入ることなど考えられない。仮に北朝鮮が韓国内への攻撃を開始して、米国とともに交戦するような状況が生まれたとしても、在韓邦人や在韓米国人の国外脱出を受け入れる可能性があるくらいです。