これは「私たちの物語」だ
幸い、この「東大女子お断り」には変化が生じている。2020年、学生たちが差別的なサークルは新入生へのオリエンテーションに参加させないと宣言・実行したのだ。ただ、学内サークルにしても、男子が女子に「さながらキャバクラ」の接待をさせていたという声もあった。運動部では、女子が「どこまでいっても男子の存在を脅かさないように位置づけられていた」とか、「男尊女卑を最も感じる世界」だったと回想する人もいた。
東大男子がこうしたあり方を伝統として受け入れ、大学で旧来型のジェンダー観を強化して社会に出れば、男性優位の社会が保たれることにもつながりかねない。彼らの多くはエリートとして、社会の中枢を担う立場になるからだ。取材では、東大の男性教授によるセクハラ、「女子NG」の研究室があったという証言もあったが、そうした教授は学生時代から染みついた文化が抜けなかったのかもしれない。
だからこそ、「たかがサークルの話」では終わらないのだ。
さて、かように東大女子を追ってきた筆者だが、自分自身は東大と縁もゆかりもない。それでも東大女子のインタビューにどんどんハマり、一冊の本にまでしてしまった。やはり私大卒の担当編集の女性とは、インタビューでの一人ひとりの言葉を振り返りながら「不思議と社会や自分の状況と重なるよね」と語り合った。
それは自分たちもまた、男社会で生きてきた女性だから、ということだろう。発売後には同じような読者の共感が寄せられ、ますます「私たちの物語」という思いを強くしている。
そして、本書に出てくる東大女子たちは、どうにもならない壁にぶつかっては、何度でも立ち上がって人生をやり直している。そうした彼女たちの再起力=レジリエンスには、女性に限らず、誰もが自分らしく生きるヒントを得られるように感じている。