日本では「塩分の多い食事を続けると胃がんになりやすい」と言われるが、これも科学的に確かなことではないという。
「胃がんは東アジアに多くヨーロッパに少ない病気であることに加えて、多くの研究者は塩と胃がんに関係があると思っておらず、他のがんほど研究が進んでいません。少なくとも、減塩すれば胃がんにならないとのエビデンスはありません」
厚労省は成人男性1日7.5g未満、女性6.5g未満の塩分摂取を目標に掲げる。しかし、減塩には血圧を下げる効果も病気を予防する効果もないと主張する大脇医師は「日常の食事で塩を我慢する必要はありません」と訴える。
「日本人は平均で1日10.1gの塩を摂取しており、厚労省の塩分摂取目標を大幅にオーバーしています。ところが日本は世界有数の長寿大国。この事実が、塩分摂取と健康には何の関係もないことを示しているのではないでしょうか」
大脇医師が指摘する最大のデメリットは「食事がおいしくなくなること」だ。
「厚労省の減塩目標に従ったら、食事が味気なくなります。健康に何の効果もない減塩をやめれば、献立の選択肢が広がって割高な減塩食品を買うことがなくなり、結果的に家事負担が減って夫婦仲も円満になる可能性があります。そして何よりも、塩を使ったおいしい食事、自分の好きなものを食べることができます。せっかく日本には塩を使った料理が伝統的に多いのに、それをガマンしたら人生がつまらなくなります」
塩はおいしい、に頷く人は多いはずだ。
コレステロール摂取量は気にしない
減塩をやめることと共に大脇医師が提言するのは、「油を摂ろう」ということだ。
これまで油は「太る」「体に悪い」として敬遠されてきた。だが大脇医師は「油では太りません」と主張する。
「もちろん油はエネルギーを含む栄養素なのでたくさん摂れば太ります。しかしダイエットをする場合、油を減らすことより米やパンなどの炭水化物を減らすほうが効果的です。よく行なわれる糖質制限ダイエットは米やパンを減らして体重を減らす試みで、肉はいくら食べても構いません。その際、食事全体の量を一定にすれば、糖質を減らすことは脂質とたんぱく質の割合を増やすことを意味します。それで減量できるということは、言い換えれば油を多く摂ったほうが減量しやすいのです」
他方で「油が体に悪い」と言われるのは、血液検査で示される「コレステロール」と、食べ物に含まれる「コレステロール」が同じものであると誤解されたからだという。
「血中のコレステロールと食べ物のコレステロールは全くの別物であり、コレステロールを多く含む食品を食べても、血中のコレステロールは増加しません。このため『コレステロール値が高くて危ない』と医師に言われても、『コレステロールを含む食べ物』を減らす必要はありません。コレステロール値を下げるために必要なのは個々の食材や栄養素を調整することではなく、全体の食べる量を減らして痩せることです。油はコレステロールが多いイメージがありますが、前述したように減量するには炭水化物を減らすことが効果的で、油を摂っても問題はありません」