『戦場のメリークリスマス』の製作発表記者会見で話す坂本。大島監督(中)とビートたけし(右)(1982年=共同通信社)

『戦場のメリークリスマス』の製作発表記者会見で話す坂本。大島監督(中)とビートたけし(右)(1982年=共同通信社)

手術は20時間、腸は30cm切除した

 突然の余命宣告。ショックを隠し切れない坂本に、セカンドオピニオンがさらなる追い打ちを掛けた。がんが最も進行した段階を示す「ステージIV」であり、両肺にも転移していることが判明したのだ。当時の心境を坂本は、6月7日発売の月刊文芸誌『新潮』7月号で始めた連載『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』の中で《はっきり言って、絶望的な状態です》としている。そんな絶望の中、坂本は昨年1月に手術を受けた。

「直腸と肝臓を2か所、リンパに転移したがん細胞を摘出しました。手術時間は20時間にもおよび、腸を30cmも切除する大手術だったようです」(坂本の知人)

 手術は無事に終わったものの、両腕には点滴、腹には5本の管を入れた闘病生活が始まった。さらに、傷口が回復するにつれて別の問題に悩まされた。1週間ごとに新たな合併症が見つかる状況に陥ったのだ。食事も喉を通らずに、体重は10kg以上減少した。体力の回復を待って、その年の10月と12月には、2回に分けて両方の肺に転移したがんを摘出する手術を受けている。

「手術によって、いま取り除ける腫瘍はすべて切除できたようです。ただ、病巣はまだ残っていて、増殖を続けている。今後は薬による治療を続ける必要があるそうです」(前出・坂本の知人)

 坂本がこれまで公表したがんは、昨年1月の摘出手術までだ。しかも当時、所属レコード会社はステージなどの詳細を明らかにせず、手術を受けて入院加療中という内容に留めた。坂本本人も公式ホームページに、《残念ながら、新たに直腸がんがみつかりました》とのメッセージを掲載し、詳しい病状には触れなかった。

 自らの連載で詳細を明かすという心境の変化は、覚悟の表れだった。

「当初、坂本さんはがんに関する詳細は、公表しないでおこうという考えでした。隠そうとしていたわけではなく、治療すれば治るのだから公にする必要はないと思っていたんです。

 ですが、昨年末に2回の大手術を終えても闘病が続くことがわかった。両肺に転移していたことや、がんが全身に回っていることを考えると、がんそのものを受け入れるほかない。死を身近に感じたとき、自分の言葉で詳しく病状を明かそうと決めたのです。それが今年の2月頃です。現実を受け入れるまでには、涙を流したこともあったようです」(前出・坂本の知人)

代表曲『戦メリ』への葛藤

 坂本は現在、日本の自宅マンションで生活している。

「現実を受け入れてからの坂本さんは、創作活動に力を注いでいます。体調が優れないときもありますが、動揺するわけでもなく達観している様子です。最後の音楽の追究に時間を割いているようです」(前出・坂本の知人)

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