空想上の数字
北村氏が続ける。
「100年安心と聞かされた国民は、100年先まで年金で安心して生活できると受け止めた。しかし、本当の意味は、マクロ経済スライドで年金支給額を目減りさせていけば国の財政は100年持つということで、国民の老後の生活を保証したものではない。その証拠に、厚生年金受給者の多くは、すでに現役世代の所得の4割とか3割の年金しかもらっていない。
厚労省がシミュレーションしている所得代替率は、夫が40年間会社勤めをして、妻が40年間専業主婦をしていたというモデル世帯。そんな世帯がどれだけあるのか。
大卒サラリーマンの場合、途中で転職したりで加入期間35年ほどの人も多く、妻も基礎年金の加入期間40年に満たないケースが大半です。厚労省はいつまで現役世代の所得の50%を保証するという“空想上の数字”で国民を誤魔化そうとするのでしょうか」
実は、小泉政権の年金改革は完全に失敗だった。日本経済は長いデフレが続いたため、物価上昇時に年金の増額を抑える「年金目減り作戦」(マクロ経済スライド)が一度も発動できなかったからだ。国民に保険料値上げの痛みを強いても、年金財政の面では100年安心どころか、危機的状況は変わらなかった。
※週刊ポスト2022年7月8・15日号