2015年11月、伊勢志摩サミット警備に向けた公開訓練で、犯人役を取り押さえる警視庁の警護官(SP)(時事通信フォト)

2015年11月、伊勢志摩サミット警備に向けた公開訓練で、犯人役を取り押さえる警視庁の警護官(SP)(時事通信フォト)

厳重な警護態勢だった米でのチャリティーイベント

 9日夕方、奈良県警の鬼塚友章県警本部長が記者会見を開き、「このような重大な結果を招いたことを踏まえ、今回の安倍元内閣総理大臣の警護警備に関する問題があったことは否定できないと考えている」と述べた。体制なのか、配置なのか、緊急時の対応なのか、警護にあたった警察官の個々の能力なのかについて、具体的な問題点には触れず「全体において、問題があったものと考えている」と語った。

 ある警察関係者は、全体において問題があったという本部長の言葉通り、「これまでも選挙の演説で使用されており、今まで大丈夫だったから大丈夫だろうという意識が強かったのではないか」と分析する。背面の警戒がなされていなかった点を強調し、「360度見渡せる場所では、背後に車両を置くなど防御できるものが必要だった。これまで問題が起きなかったから問題ないだろう、大丈夫だろうというダロウ主義から、前例を踏襲し、今まで通りで済ませてしまった。少なくとも街宣車に乗せていれば状況は違っていた」と話す。

 背面警備の不備を指摘する声は多い。筆者も米国の要人警護の現場で、要警護者を囲むため、背を向けるように立って背面を警戒するボディガードの姿を何度か見たことがある。以前、ワシントンD.C.のあるホテルで開かれたチャリティーイベントで、ジョージ・W・ブッシュ政権時の副大統領だったディック・チェイニー氏が、演説のため会場入りした時の厳重な警護態勢に驚かされたことがある。

 そのときのイベント参加者は事前に登録が必要だったが、ボディチェックなどは行われていなかった。そのためなのか周囲を数人のボディガードが固めていただけでなく、数頭の警察犬を同行していたのだ。警護費用がどこまで公費だったのかはわからないが、チェイニー氏が演台に立つ間、ボディガードらは彼を中心に位置し、四方八方に目を配り、その傍らに数頭の警察犬を待機させていた。チェイニー氏は副大統領時代に”影の大統領”と呼ばれるなど様々な噂や評価があった人物だが、周囲に人が近寄れる雰囲気ではなかった。おかしな動きをする者があれば、警察犬がすかさず飛びかかるよう訓練していたのだろう。会場の雰囲気は警察犬がいるというだけでピリピリしていた。
変わった様子を見せずに近づいた容疑者

 容疑者は安倍氏に容易に接近し、1度目の発砲の後、さらに数歩近づき発砲した。この状況に対して、ある警察幹部は「奈良県警がこのような要人警護に慣れていなかったのではないか」と話す。

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