昨年末、大阪市北区の心療内科が放火され、26人が亡くなった(写真/共同通信社)

昨年末、大阪市北区の心療内科が放火され、26人が亡くなった(写真/共同通信社)

 あれほど凄惨な事件が起これば誰しも、やり場のない怒りや悲しみ、恐怖を覚えるだろう。だが、ネット上にそれを吐き出すと、そうした負の感情は瞬く間に増幅され、広がっていく。

「心理学的に、心に抱えた不平不満を他人に直接吐き出すと、ストレスが和らぐことがわかっています。一方で、SNSなどに書き込むと、不満やストレスはむしろ大きくなることが明らかになっている。仮に“あいつのことが許せない、殺してやりたい”と家族や友人に話せば“確かにあいつはひどいやつだ。気持ちはわかるが、落ち着きなさい”と、共感しつつなだめてくれるでしょう。

 ところが、匿名性のあるSNSなら“やっちまえ”“期待してる”などと、無責任に賛同し、あおり立てる。すると書き込んだ人は“やっぱり自分の考えは正しいんだ”と思い込み、ますます過激な思想を持ちます」(碓井さん)

 社会から隔絶された人が、顔の見えない不特定多数とのコミュニケーションを「世界の真実」と思い込み、「正義は我にある」と信じ込む。そうして初めて、彼らはダークウエブにアクセスし、殺人のための情報や道具を集め始めるのだ。

 犯罪とは縁のない、善良な一般市民の無責任な同調こそが、無敵の人をローンウルフ型犯罪者に仕立て上げる。すでに銃撃事件の直後から、ネット上には「山上を即刻死刑にしろ」「安倍は殺されて当然だ」「国葬なんて、死んでまで税金を食うのか」などと、暴力的な議論や主張があふれ、早くも次なるローンウルフを生みかねない状況だ。

※女性セブン2022年8月4日号

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