──撮影現場で印象に残るエピソードがありましたら、教えてください。
岡本:第8回に御家人たち4~5人で車座になって酒を飲んでいるシーンがあったのですが、スタジオでのカメラリハーサルの時、チーフディレクターの方から「岡本さん、野草をつまみに置いておきました」とささやかれ、“えっ!?” と驚きましたよ。僕の趣味が野草摘みで、日頃、野草を摘んで食べていることをご存知だったのでしょうね。
そう言われてセットを見ると、本当に小道具の酒が置いてあるところに野草が用意されていた! 実際の映像ではあまりわからなかったと思いますが、演出もそこまで洒落ているんですよ。撮影中につまむ余裕はとてもなかったけれど、カメラが回っていない時にちょっと食べました(笑)。
──千葉常胤はどのような人物と感じましたか?
岡本:常胤は誠実で純朴な人である一方で、所領の領主として一族を守り、発展に尽くした人物です。常胤が源頼朝と出会ったのは63歳の時。その後の約10年間、73歳頃までに大きな戦いは終わりました。時流を読む才知があり、あの戦乱の時代を生き抜いて84歳までの天寿を全うしたのはすごいと思います。
鎌倉殿の13人の中に入っていかないのも、御家人たちの争いから距離を置いていたからでしょう。彼としては頼朝に仕えて、自分の人生をよしとしたのではないでしょうか。財力もあるのに、質素な暮らしに徹する。目立たないけれど、非常に人間的にバランスがとれた立派な人物で、鎌倉幕府の縁の下の力持ちとして重要な役割を果たしたのではと感じます。