前述の「成長しない」に私が深さを感じたのは、この対談を読んだせいなのです。大人の女性として、何もかも熟知し、ちゃんと実践している。風吹ジュンさんの美しさは「一日にしてならず」だとも思いました。
実は、いままでナマで会った数々の芸能人の中で、私がもっとも若いと驚いたのが風吹ジュンさんなのです。あれは風吹サンが『はみだし刑事情熱系』(テレビ朝日系)に出ていらした20年ほど前。共演者だった梅垣義明サン(63才)のライブ会場でのことでした。
私を含め、観客はフロアに体育座りだったと記憶しますが、最後列にひとりだけ丸椅子に座っている白T姿の“少女”がいたのです。「春日井のグリーン豆」を鼻の穴に詰めて歌いながら飛ばすのをはじめ、宴会芸と本格派のシャンソンの楽しいコラボが梅チャンのライブの真骨頂なので、少女の姿は珍しかったのです。ゆえに私は何度も振り返って彼女を見てしまいました。
その後、梅チャンが「来てくれました……風吹ジュンさん」と、独特の間と照れた表情で彼女を紹介し、スポットライトが当たってやっと、その“少女”が風吹ジュンさんだとわかりました。
それまで場内が暗かったから、そう見えたわけではありません。贅肉がまったくないスリムなボディーにピタッとしたTシャツをお召しになり、デニム越しの脚も細くて真っすぐで、どこからどう見てもロングヘアの10代の女の子にしか見えなかった。このときはすでに50代。驚きました。
多くの苦労を微塵も感じさせず、美しさを保っています
さらに古い話になりますが、風吹ジュンさんといえば、私の世代だと、息継ぎに特徴があって、多くの歌手がモノマネしていたデビュー曲『愛がはじまる時』が印象的でした。胸元が大きく開いた薄手の白いブラウスにデニムをももの部分でカットしたホットパンツで歌っていらした風吹サンは、いまでいうセクシーアイドルというポジションでした。
改めて検索してみると、「ユニチカマスコットガール」まではいいとしても、「ホステス時代を隠すため、年齢をサバ読んで売り出したことが後にスキャンダルになった」とか、「誘拐事件」「失踪事件」などという、物騒なワードも出てきました。
もう清純派では売れないということだったのでしょうか。1979年、松田優作さん(享年40)主演の映画『蘇える金狼』で、フルヌードで激しい濡れ場を演じた風吹ジュンさんを、往年の芸能マスコミは、「あの松田聖子サン(60才)よりも先に、スキャンダルをバネにして大スターになった人」というふうに位置付けています。
『寺内貫太郎一家』(TBS系)第2シリーズへの出演は、樹木希林さん(享年75)の口添えがあったからだとか。風吹サンの生きざまが希林さんの“お好み”だったというのは、わかるような気がしますよね。