会場には、玉井力三が手がけた学年別学習雑誌「学年誌」表紙絵の原画が249枚(描き直しの絵を含めると250枚)展示されている

会場には、玉井力三が手がけた学年別学習雑誌「学年誌」表紙絵の原画が249枚(描き直しの絵を含めると250枚)展示されている(撮影/太田真三)

壇蜜:付録も文化を反映していましたね。私が小学生の頃は初代ゲームボーイの時代で、あの形でテトリスならぬ「手とリス」という(笑)紙製の付録がありました。

山下:ぼくの小学生時代は東京五輪に始まり、アポロの月面着陸や大阪万博などイベント尽くしで、ここに並んでいる付録と同時代です。

壇蜜:どれをとっても輝いていた昭和の時代を感じさせます。付録は時の流れで著しく進化しましたが、玉井さんの表紙もレトロさが漂う50年代の絵からどんどん進化して、歴代の表紙を並べても写真と切り替わった時期がわからなくなるくらい写実的になって驚きました。

山下:毎月毎月、こつこつと表紙絵を描き続けた結果でしょう。晩年は“本当に絵なの!?”と見紛うほどのスーパーリアリズムに達している。彼はもともと画力が優れているんですよ。中村不折の下で洋画を学び、『三笠艦橋の図』を描いたのは二十歳の時。模写とはいえ、ここまで描けるのは天才少年だったと言えると思います。

壇蜜:『椿咲く頃』の人物も写実的です。学年誌以外でも『ユーモア』『主婦と生活』などの表紙絵で、人物をたくさん描いていたのですね。

山下:彼の「商業美術家」としてのスタートは大人向けの雑誌。卓越した画力で“超売れっ子表紙画家”の地位を築きました。油絵を団体展に出展する機会もあったようですが、壮年期の40~60代を表紙絵に費やし、人々の記憶に残る絵を描き続けた。ぼくはそういう職人気質の商業美術家を顕彰したい、という気持ちがとても強い。本格的に再評価すべく、今回の展覧会を機に「玉井力三応援団」を結成しました。

壇蜜:日本美術応援団に続き玉井力三応援団の団長でもあるのですね。鏑木清方や小村雪岱も顕彰すべき商業美術家と教えていただきましたが、出版文化の挿絵や装幀、表紙絵もまた素晴らしい日本美術だと感じます。

【プロフィール】
壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『新・壇蜜日記2 まあまあ幸せ』(文春e-Books刊)。

山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

※週刊ポスト2022年10月7・14日号

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