孤独な太平洋上での応援ソング
「小学生の時、将棋を覚えた頃に流行った曲。将棋人生のはじまりを 象徴する歌として、今でもカラオケで必ず歌います」(62歳・無職)との声が寄せられたのは、村田英雄の『王将』だ。
海洋冒険家の堀江謙一氏(84歳)が、思いを語る。
「1962年に単独太平洋横断を目指して大阪湾を出港した時のことです。2か月ほど経った頃にハワイの北側2000km付近で、ハワイからの日本語のラジオ放送をキャッチしたんです。この時に流れてきたのが『王将』でした。当時、まさに吹けば飛ぶような小さなヨットで太平洋横断なんて誰にも理解されず、私は奇人・変人扱い。
『笑わば笑え』という心境でした。この歌は私のために作られたのではないかと思ったほど歌詞や歌声に感動し、太平洋上でずいぶんと励まされました。今でもこの歌に、勇気をもらっているんです」
【プロフィール】
佐孝康夫(さこう・やすお)/1953年生まれ。上智大学在学中に「葡萄畑」としてデビュー。その後、作曲家・ピアニストとして活動。宮本亜門ミュージカルの音楽監督を務め、現在は和歌の魅力を動画を通して世界に発信している。
生島ヒロシ(いくしま・ひろし)/1950年生まれ、宮城県出身。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業。1976年にTBS入社。ラジオ番組を皮切りにさまざまな番組で活躍。1989年に独立。現在、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう定食・一直線』などに出演中。
堀江謙一(ほりえ・けんいち)/1938年生まれ、大阪府出身。1962年に世界初の太平洋単独横断に成功以降、果敢に海洋冒険に挑戦。2022年にもカリフォルニアから和歌山県日ノ御埼沖の単独横断という世界最高齢での快挙を成し遂げた。
※週刊ポスト2022年11月18・25日号