歴史的な危機と言っても過言ではないエネルギー高騰による電気代とガス代の凄まじい値上がり、筆者も現在の戸建てに住んで20年、それまで見たこともない電気・ガスの請求書を受け取っている。おそらく日本中の大半はそうなのだろう。これは本当に「恐怖」でしかない。政府は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」として2023年1月から電気代やガス代の補助(契約料により条件あり)を決めたがプロパンガスは除外であり、また現時点では2023年9月使用分までしか予定されていない。そしてこのままでは本当に欧州各国のように電気代やガス代は2倍どころか3倍、いやそれ以上になってしまうかもしれない。
エネルギー自給率12.1%の日本、石油はもちろん液化天然ガスも石炭も3倍どころか5倍、石炭に限れば7倍と高騰し続けている。このどれもが「ほぼ日本の国土で賄えない」資源である。電気代が高いどころか電力不足の可能性すらある状況、もはや覚悟を決める時が来た、と言っても過言ではない。地熱だ、ソーラーパネルだは有効かつ将来的に大事かもしれないが、私たちの「いま」にとっては「それじゃない」ように思う。
イギリス在住の知人いわく、電気とガスで月8万(2022年12月)、国情や物価の違い、多少の補助金は出るにせよ、30年間賃金は上がらず増税と物価高の続く日本で、こんな金額に耐えられる一般家庭がどれだけあろう。今回の取材で他にも多くの異口同音としての「嘆き」「悲鳴」を聞いたが、電気代やガス代の歴史的高騰、筆者も個人的に「恐怖」しかない。もはや節約がどうだの範囲を超え始めている。
この高騰は電気代やガス代が高いだの以上に、私たちの人生と国家存亡の危機の端緒ではないか。化石燃料や原子力の懸念と日常生活という「環境か生活か」どちらを取るかの選択をヨーロッパ同様に迫られている。1月20日、ついに東京電力も一般家庭向け電気料金を3割前後値上げすると申請した。一般家庭はもちろん、法人契約でない小売店舗や飲食店もまたさらに厳しくなるに違いない。
もはやイデオロギーにとらわれることなく、古い火力発電所の活用、原発再稼働の可否も含め、老若貴賤貧富の関係なく、日本国民全体で早急に決めないと取り返しがつかなくなる。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。