目指すは世代間の分断ではなく融合
民放各局が昭和をフィーチャーした番組を手がけるのは、「ファミリーを中心にしたコア層(13~49歳)の個人視聴率を得たいから」に他なりません。そのため、「このヤバさが当たり前だった」という昭和世代と、「このヤバさはありえない」という平成世代を分断したいわけではなく、むしろ「テレビを通じて世代間を融合したい」という思いがあるものです。
まず重視されているのは、「昭和をフィーチャーすることで、映像としての面白さに加えて、現在のカルチャーや価値観と比較して楽しんでもらう」こと。だからこそ「家族団らんの最適なツールとして使ってほしい」という狙いがあり、昭和の時代がそうだったように、親子や夫婦の間に会話が自然発生するような番組を目指している様子がうかがえます。
また、民放各局の事情としては、自局に眠るアーカイブ映像の活用は、制作費の削減が求められる中、優先度の高い課題の1つ。もし昭和ブームが落ち着いたら、異なる切り口からアーカイブ映像を使った企画が考えられていくでしょう。
そのアーカイブ活用という意味も含め、ダウンタウンを起用した日本テレビの特番は他局にとっても、「もうしばらくはブームをけん引する存在であってほしい」ところ。「視聴率も反響もそこそこの結果を出してもらい、自局の番組につなげたい」という思惑があるため、「他局の番組だけど、ひそかに応援する」というテレビマンが少なくないはずです。
気の早い視聴者は、「今年の大みそかは『笑ってはいけない』がダメなら、この特番を放送してほしい」という声をあげ、さらに「昭和の年末年始特番をテーマにしたら面白そう」なんて具体的な意見も見かけました。さまざまな意味で関心の高い特番であることは間違いなさそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。