動画で人気を得る人とは? 面白いかどうかより大事なこと
有隣堂のYouTubeに登場した社員が人気を博し、その社員目当てに店舗を訪れるファンもいるという。動画で注目を集めるような人材発掘、育成はいかに可能なのかをハヤシ氏に聞いた。
「有隣堂に特別な人はいません。動画で大事なのは、面白いことを言うよりも、建て前を言わないこと。言い換えれば素直であること。それを企業人として、かつカメラの前で言えるかどうかです。一般に、広報がしっかりしている会社ほど、企業としての発言は建て前になるんですよ。広報って建て前ですから。で、建て前って、面白くないんです。有隣堂は良くも悪くも広報という概念が未成熟 な会社で、だから、動画で自由にものがいえる土壌があったのだと思います」
登場する社員たちの素直な発言に、MCブッコローが鋭く突っ込む。ある動画では、社員が自信をもって紹介したオススメ食品を、ブッコローは「まずい」「(100点中)2点!」と評した。こうした本音の掛け合いが、真面目なイメージのある書店らしからぬエンターテイメントを生んでいる。
しかし、人間、簡単に本音が出るわけではない。本音を吐露させる仕組みも必要なのだ。
「約8分の動画を作るために、1時間収録しています。素人集団が本音を出すためには、そのくらいの時間が必要です。また、台本を作りません。台本を作り込んで短い撮影にしたほうが編集は圧倒的にラクですが、そうすると、大きな笑いを生む予想外の一言とか、ポロっと出た本音は期待できなくなる。編集は大変ですが、有隣堂はこのやり方でうまくいっています」
芸人の雑談動画が多くの再生回数を稼ぐこともあるが、あれはプロだから成せるワザ、とハヤシ氏。企業YouTubeには手間暇かけたモノづくりが欠かせないようだ。裏を返せば、突出した個性がなくとも、仕組みや編集力によって、面白い企業動画、人気出演者を作り出すことは可能だということだ。