低ナトリウム血症は脳の機能障害を起こし、結果として動作や反応が緩慢になったり、錯乱を起こす。悪化すると、筋肉のひきつりやけいれんを引き起こすこともある。そうした患者を診てきた大脇さんは、高齢者にもっと塩気のあるものを食べるようすすめることがあり、実際に塩を処方して、ご飯に混ぜて食べるようすすめることもあるという。
山口さんも、盲信的な減塩の怖さをこう説明する。
「体中のナトリウムが少なくなると、体はナトリウムを体内に保つよう、捨てないようにしようとするため、『レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系』という血圧や水分量の調節にかかわるホルモンが増え始めます。
このホルモンが働くと炎症が起こりやすくなり、動脈硬化やがんにつながるという指摘もあるのです」
過ぎたるはなお及ばざるがごとし。極端な減塩は、思いもよらない健康被害を起こしかねない。
塩分を意識しない食生活を習慣にする
塩分を減らすか、増やすか──最適解は「塩分を意識しすぎない食生活を心がける」ことだと山口さんは話す。
「塩分ではなく、カリウムやマグネシウムを意識するといいでしょう。カリウムやマグネシウムの摂取量が多ければ多いほど、心血管系の病気を減らすというデータがあります。また、大根や葉物などの野菜や果物、豆類に多く含まれるカリウムには塩分を排出する効果がある。カリウムは水に流れやすいので、野菜は生のままサラダで食べたり、スープにしたり、水分まで余すことなく食べるのがおすすめです。
塩についても、カリウムやマグネシウムを多く含む天然塩を意識して選ぶとよいでしょう」(山口さん・以下同)
積極的な水分摂取も心がけたい。
「夜寝る前と朝起きたときに水を1杯ずつ飲むと、それだけでも血圧が下がります。
前述した『レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系』のホルモンは体内の水分量が少なくなっても働きが活性化されてしまうため、水分は多くとるに越したことはありません。
また、自律神経が乱れると血圧が上がるので、副交感神経を優位にするため、深呼吸がおすすめです」
過剰な減塩に振り回されることなく、朝晩の新習慣とちょっとした食事の工夫で、毎日の健康をキープしてみては。
※女性セブン2023年5月4号