暴力団員の両親や祖父母にもアポ電
コロナ渦ではヤクザも自宅で自粛生活を送っていたのだろう。第26号(2022年7月1日号)には、<円満の 秘訣は ソーシャルディスタンス>と、家で妻との距離をうまく取ろうとする句もあれば、<ケチな嫁 口はだすけど 金出さず><飼い猫と 女房も同じ 爪を研ぎ>という外では虚勢を張っても家の中では妻に頭が上がらないという、普通の家庭と変わらない様子が見えてくる。第22号(2020年9月1日号)では<ウチの妻 コロナと言いつつ キスしない>と笑えるような句もある。
26号には他にも<リモートで 会議したいが 俺、無職>とコロナ渦でシノギが激減したといわれるヤクザ稼業の実態を嘆く句や、<アルコール 飲むより先に 消毒を>という句もある。
第24号(2021年9月1日号)には、<自宅にて 金魚すくい コロナ渦で>と祭りの露店を懐かしむような句や、盛んにワクチン接種についてメディアが報じていたこともあり<ワクチンを 受けに行ったら クラスター><ワクインで よぎるジレンマ 副作用>などという句もあった。六代目山口組は幹部に高齢者が多いため、ワクチンを接種したかどうか報告するよう傘下組織に通達が出ていたというぐらいだから、感染対策にはかなり気を使っていたようだ。第22号(2020年9月1日)には<咳一つ 周りの視線 鬼形相>と詠まれた句もあり、組員らが置かれていた状況がこれらの句からも見えてくる。
ヤクザなのに、このような句を詠むのかと思うものもある。特殊詐欺に関する句だ。最近は特殊詐欺に絡んだ事件が度々報じられたこともあり、第28号には<俺俺と 母に電話し 怒鳴られる>、第22号には<俺なのに 母がオレオレ 決めつけた>という句が載った。積水ハウスが所有者に成りすました女と地面師グループに騙され55億円近くをだまし取られた詐欺事件があった翌年の第15号(2018年3月1日号)には、<俺だよと 祖母に電話し 知りません>という句が出た。特殊詐欺には暴力団が絡んでいると言われるが、組員の両親や祖父母のところにも詐欺師たちからのアポ電はかかってくるようだ。
コロナ渦の3年間で川柳コーナーの句もヤクザらしいものからサラリーマン川柳的な内容のものが多くなった。暴対法や暴排条例より、コロナウイルスの方が暴力団組織を弱体化させるのかもしれない。