スター選手への厳しい処分に選手会はどう対応してきたか
今回の問題について、球界の労働組合である「日本プロ野球選手会」がどう出るのかも注目される。過去にスター選手が書類送検され、球団の処分が下った場合、選手会はどんな行動に出てきたのか。
2000年10月、西武の松坂大輔(当時20)が道路交通法違反容疑、身代わり出頭をした黒岩彰広報課長(当時)が犯人隠避容疑で書類送検され、球団は松坂に無期限の野球活動禁止や自宅での謹慎を命じた。堤義明オーナー(当時)も怒り心頭で、松坂にはキャッチボールすら許されない処分が下った。しかし、選手会は西武に早期処分解除の嘆願書を出し、球団もこれを受け入れ、1か月も経たないうちに野球活動が再開された。横浜高校で甲子園春夏連覇の原動力となり、新人の年にいきなり最多勝を獲ったスター選手が練習をできないのは、球界にとって損失になると考えられていたのだ。
2017年7月、巨人の山口俊(当時30)が酒に酔って器物損壊及び傷害トラブルを起こした。8月に傷害と器物損壊の疑いで書類送検されたが、被害者との示談が成立。不起訴処分となった。しかし、この行動を重く見た球団は山口に総額1億円以上の罰金、減俸を科し、シーズン終了までの出場停止を命じた。選手会は「処分が重過ぎる」と再検討を求めたが、巨人は選手会の要求を受け入れなかった。山口は同年にFAで巨人に移籍してきたピッチャーで、前年は11勝、防御率2.86の好成績を挙げていた。
「労働組合という立場を考えれば、選手会が声を上げるのは当然でしょう。労使交渉では使用者側が優位に立ってきた歴史があり、プロ野球界でもFA導入以前は選手の権利はないに等しいくらいの扱いを受けてきた。だから、選手の権利を守ろうとする意識はわかります。
とはいえ、書類送検されるようなトラブルを起こした時、厳しい処分が下るのは当然ですし、毎回、処分を軽くしてほしいと主張する必要があるのか。最も大事なのは、今後同じような問題を出さないこと。そのために、一人ひとりの選手の心に隙が生まれづらくなるような厳しい処分は必要不可欠になる。『何かあったら誰も守ってくれない』と思えば、自分を律するようになります」(前出・球界関係者)