あれから40年。敬愛するクミコさんが、私の「心の歌」ともいうべき金子由香利さんの「時は過ぎてゆく」をレコーディングすると聞き、恥ずかしながら私の昔話を書かせていただきました。
美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」は、クミコさんが昭和のドキュメンタリーだと評しているように、私も少女期のリアルな日常と重なります。美輪明宏さんの「ヨイトマケの唄」を聴いた時、真っ先に思い浮かんだのが山の現場で軽業師のように足場を登っていた父の姿と額に汗を滲ませた母の疲れた顔でした。
そしてその原風景は、ヨイトマケの子同様、「必死に頑張れば希望の欠片くらいは掴める」ということをも教えてくれました。「時は過ぎてゆく」からは、惰眠を貪ってはいけない。楽しいことにうつつを抜かしてはならないということを学び、「ヨイトマケの唄」からは、苦しくとも悲しくとも自分を信じて前進すれば明日は今日よりいい日になるということを学びました。
熱く、美しい「銀巴里の歌たち」には、この混迷の時代にこそ聴いてほしい力強さが漲っています。
【プロフィール】
クミコ/1982年シャンソニエの老舗・銀座「銀巴里」でプロ活動をスタート。2002年「わが麗しき恋物語」で脚光を浴び、2007年、中島みゆき書き下ろしの「十年」がヒット。2010年、「INORI〜祈り〜」で第61回NHK「紅白歌合戦」初出場。2022年、銀巴里でプロ歌手として活動を開始してから40周年を迎え、現在も全国各地でコンサートを行なう。10月から大阪、札幌、名古屋、東京で「2023わが麗しき歌物語Vol6~銀巴里で生まれた歌たち…時は過ぎてゆく~」を開催予定。
残間里江子(ざんま・りえこ)/1950年仙台市生まれ。アナウンサー、雑誌記者、編集者を経て、企画会社を設立。出版、映像、文化イベントなど数多くプロデュースしている。