総務大臣の時も、「聖子ちゃん、ちょっと話がある」って呼ばれたけど、私と安倍さんが会った時はなぜか首相動静に載らない。おそらく、(野田氏入閣の)人事案がマスコミに漏れて潰されたくなかったんでしょう。安倍さんは何人かの敵をはっきり決めていて、私を含めて他は敵とはみなしていなかったですね。
とくに同期のことは常に気にかけていた。安倍さんは総理就任後の同期会で「僕は同期のみんなを安倍政権で大事にする」と言ったことがあって、実際に同期の中で安倍政権の大臣になっていないのは浜田靖一(現防衛相)さんくらいではないか。安倍さんが辞める時、「浜田さんだけ(大臣に)できなかったんだよな」と残念がっていました。
前回総裁選でも、安倍さんが高市(早苗)さんを推したのは、同期の岸田さんを総裁にする作戦だった。右寄りの人はいきなり岸田さん支持は無理だろうから、高市支持のグループをつくって、決選投票で岸田さんを勝たせる。このことは安倍さんから直接考え方を聞いていたからわかる。
主義主張が違う私と安倍さんの共通の趣味が深夜のネットフリックス。一緒に見る訳じゃないですよ(笑)。総務大臣の時だったか、「ネットフリックス、面白いよね」という話になって、安倍さんに「これは最初に見ておいたほうがいいよ」と勧められたのがホワイトハウスが舞台のドラマ『ハウス・オブ・カード』。2人ともCIAやFBIとかの陰謀系が好きで、それから夜中にお勧めのドラマをメールで情報交換するようになった。
亡くなる前に「これ面白いよ」とやりとりしたのは『チェスナットマン』という北欧ミステリー。もう安倍さんは見られないんだと思ったら、悲しくなって。
【プロフィール】
野田聖子(のだ・せいこ)/1960年生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業後、帝国ホテルに入社。1993年、初当選。総務大臣、自民党幹事長代行、男女共同参画担当大臣などを歴任。岐阜1区選出、当選10回。
※週刊ポスト2023年7月14日号