歌舞伎界にとっては歴史的な一歩となるが、火種もくすぶっている。
「菊之助さんは、将来的に自分の息子である七代目尾上丑之助と眞秀が大名跡の菊五郎を争うかもしれず、梨園で姉・しのぶさんの存在感が増すことにピリついています。しのぶさんも音羽屋を引っ張る弟には相談せず、十月大歌舞伎への出演を決めたといいます。
さらに今回の公演では、人間国宝の菊五郎さんが技能の粋を尽くして演じてきた長兵衛役を、経験も実力も充分とは言えない獅童さんが演じることが不安視されています。そもそも猿之助さんの事件後、獅童さんが自ら売り込んで、しのぶさんとの共演を成立させたそうですが、故・中村勘三郎さん(享年57)からも『古典ができない』と厳しく指摘されていた獅童さんにとってハードルの高い舞台になる。お客さんが満足するレベルの舞台になるのか……」(前出・歌舞伎関係者)
憧憬と恩讐が相半ばするまなざしで見つめてきた歌舞伎の舞台。近いようで遠い存在だった歌舞伎座をついに手繰り寄せた寺島は、「ガラスの天井」を破って新しい道を切り開いた。それぞれの思いが交錯する中で、歌舞伎界の歴史は波乱含みの新章へと突入する──。
※女性セブン2023年7月27日号