プロゴルファーの沼沢聖一氏も当時、難易度の高いフォームゆえのリスクを指摘していた。
「肩よりトップが低いことで体幹に頼ったヘッドスピードだけで打っている。豊富な練習量の賜物ですが、アマチュアが真似していいスイングではないと思います」
渋野の改造スイングは、石川遼(31)などにもアドバイスを受けて「スイングの再現精度」を突き詰めた結果だというが、結局は昨年オフに青木コーチと“復縁”し、また姿を変えた。沼沢氏が現在のスイングを語る。
「期待しているからこそ、あえて厳しい言い方をすれば……最近の渋野はノビノビと振っている感じがなく、バックスイングにも軸がない。基本がなくなっているようです」
渋野の成績に変化が出始めたのは、2021年1月に『FRIDAY』が報じたテレ東アナウンサーとの熱愛報道がきっかけとの指摘もあるが、真相はわからない。
若手の「飛距離」は脅威
選手の新陳代謝が激しい女子ゴルフの世界。苦しんでいるのは渋野だけではない。
今季の国内ツアーでは、昨年の最年少賞金女王の山下美夢有(21、今季4勝)をはじめ、2002年生まれの岩井ツインズ(明愛・千怜、21)や2003年生まれの神谷そら(20)、2004年生まれの櫻井心那(19)などが優勝し、続々と若い世代が台頭している。
一方、渋野を筆頭とする「黄金世代」は不調だ。渋野とともにツアーを盛り上げてきた原英莉花(24)は腰痛に苦しみ、将来を期待された同期も成績不振に喘ぐなど、米国で活躍を続ける畑岡奈紗(24)を除いて停滞が目立つ。ツアー関係者が語る。
「もはや24歳でも体力のピークを越えた印象です。若い世代ほど“ギア”や筋力トレーニングの進化の恩恵を受けやすく、2000年代生まれの選手は飛距離が大きく伸びている。岩井ツインズや神谷などは250ヤードを軽々超えてきますからね」
こうした“下からの突き上げ”を選手はどう感じるのか。優勝経験もある中堅プロはこう言う。
「若い世代の台頭で、これまでツアーを引っ張ってきたプロが成績を残せなくなるのは繰り返されてきたことです。新しいスターが次々と出てくる時、それまでのスター選手の心中が穏やかであるはずがないでしょう」
自身のプレースタイルが定まらず、若手の台頭著しいなか、渋野が置かれた状況は厳しい。しかし、大舞台ほど実力を発揮するのがシブコだ。「スマイルシンデレラ」の再起に期待したい。
※週刊ポスト2023年8月4日号