パブピアでの指摘(2003年の論文)。「Figure5B」と「Figure4C」は別の論文での実験画像だが、同一画像のコントラストを変えて、使い回した可能性がある

パブピアでの指摘(2003年の論文)。「Figure5B」と「Figure4C」は別の論文での実験画像だが、同一画像のコントラストを変えて、使い回した可能性がある

──20年前から画像を改ざんしていた?
「とんでもない。自分で言うのは何ですけど、そういうのには最も厳しいグループに属している」

──疑惑が指摘された段階で、釈明すべきでは?
「パブピアは匿名のサイトですから」

──辞職するお考えは?
「どういう意味ですか。まだ何も調査の結論が出ていませんから」

 国循トップの論文不正は医療への深刻な不信感を招くだろうと、東京大学大学院の小松美彦客員教授(生命倫理)は指摘する。

「基礎研究で不正に関わった疑いのある人たちは、同時に臨床医です。私たちは、彼らに自らの身体と命を預けている訳ですが、その医療機関のトップまでもが不正に関わったとなれば、治療や倫理観にも不信感が生じかねない。その意味で国循や厚労省は、真相解明に全力を挙げる必要があるでしょう」

 あのSTAP細胞事件から、間もなく10年。研究論文不正の連鎖は今も続く──。

(了。前編から読む

【プロフィール】
岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/1966年、札幌市生まれ。ジャーナリスト。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウィルス混入」スクープで、新聞協会賞、米・ピーボディ賞。著書に『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)などがある。

※週刊ポスト2023年8月4日号

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