「謙ちゃんとは割と仲が良かったんですよ。一度、『行きつけのバーで呑んでいるから来ない?』と電話がかかってきたことがありましたね」
2023年は映画を2本と、2024年放送予定のドラマ『広重ぶるう』(NHK)を撮影した。映画は来年公開のヒューマンコメディ映画『お終活 再春!人生ラプソディ』。もう1本は再来年公開の映画で、なんと主演だという。
「映画は2本とも今年前半に撮りました。1年に2本撮ると、結構忙しい。だから、今年前半は軽井沢でゆっくりしようにも、なかなかできなかったですね」
俳優として、まだまだ求められている長塚さんだ。
「美術品とか建築物とか仏像とか絵画とか、そういう年を経たものの良さ、美しさ、寂寥感、どうしようもなさ……というのもあるでしょ。若く新しいものと張り合おう、というのではなくて、その陰画とでもいうのかな。
若いときはわからなかったけど、そうした良さがわかった今、僕らは、どうすりゃいいのか。何かできることはあるのかな、と思うわけですよ。何かひとつ、ポツッと一矢報いたいという思いがある。だから、僕なんかは軽々に年をとったから引退します、とは言えないのね。同じように思ってる方がたくさんいるんじゃないかな。そういう人たちと、これからも作品ができたらいいですね」
俳優として作品に出演する以外にも、やりたいことがあるという。
「映画のシナリオを1本書きたい。実際に映画になるかならないかに関わらず、勉強はしたい。ただ、僕が考えるほどのものは、もう撮られちゃってると思うのね。だから、実現はしない方がいいような気もする。それよりも、すでにある作品をよりよく味わったほうがいいんじゃないかな。シナリオ書きたい、というのは、僕の気持ちの収め方として言ってるだけの話なんですよ(笑)」
いやいや、脚本家・長塚京三の作品も観てみたい。
(了。前編から読む)
◆取材・文/中野裕子 撮影/山口比佐夫