それでも当初は、当選が見込めると踏んでの出馬宣言だったとされる。
「時津風一門の理事の陸奥親方(元大関・霧島、64)の定年が来年4月。その空いた席を狙い、時津風一門や伊勢ヶ濱一門の海外出身の親方衆らの票を集めていたようだ。しかし、執行部が締め付けた。
宮城野親方を支援するモンゴル出身の大島親方(元関脇・旭天鵬、49)のもとで部屋付き親方だったブラジル出身の友綱親方(元関脇・魁聖、36)が6月に浅香山部屋に移籍させられたが、それも“白鵬包囲網”の動きだろう。最後は先代(元前頭・竹葉山、66)に“協会を敵に回すな”と説得され、断念に至った」(同前)
カネの使い方を知っている
宮城野親方はまだ38歳。それでも出馬断念は恥辱だったはずだ。
「貴乃花親方が理事に当選したのは37歳の時。宮城野親方が尊敬する双葉山は35歳、大鵬さんは35歳で役員待遇になった。何より、ライバルの二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)が37歳で出世の階段を順調に昇っている。それを意識しないはずがない」(別の若手親方)
二所ノ関親方はすでに、一門の統帥たる年寄名跡を継承している。
「白鵬が出馬するなら“対抗馬”で次の理事選に稀勢の里を担ぐこともあったが、これで無風になるから年功序列で高田川親方(元関脇・安芸乃島、56)の出馬でしょう。調整が難航する出羽海一門も副理事の藤島親方(元大関・武双山、51)を理事にする動きがあった。藤島親方と二所ノ関親方は将来の理事長候補。2人に出遅れたくない思いは強いでしょう」(同前)
結局は出馬断念となったが、これで“白鵬の乱”が鎮圧されたとみるのも早計だろう。
「若手親方からは人望もあるし、資金力豊富でカネの使い方を知っている。今年1月の断髪式では裏方にまで3万円の祝儀を包み、関係者の株を上げた。現執行部の大半が定年となる5年後なら、理事になるハードルは高くないし、その先の理事長の座も夢でない」(同前)
冒頭の直撃取材時、記者が“出馬を期待する親方も多いのでは”と水を向けると、宮城野親方は静かに「ありがとうございます」と応じた。協会トップを目指す意欲は、消えていないのだろう。
※週刊ポスト2023年12月8日号