選挙のための寄附なら「記載すべき報告書」が特定可能
ただ、郷原氏は「別の筋立てもあり得る」とも指摘する。12月21日付の朝日新聞が1面で報じた「安倍派の参院議員の特例措置」が重要なカギになるという。記事には、次のように記されている。
〈参院議員には特例措置があったことが新たに判明。参院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選されるが、改選の年に限り、ノルマは関係なく、集めた全額が派閥から還流される仕組みだったという〉(「朝日新聞」12月21日付)
この記事と前後して12月19日付産経新聞(「安倍派一部に全額還流」)、同23日付読売新聞(「参院選の年はパーティー収入『全額』キックバック」)などが同趣旨の記事を報じており、検察がこの事実に関心を示している可能性が高い。郷原氏がこう補う。
「焦点となるのは、2022年7月10日投開票の参議院選挙です。その2か月前の5月に催された派閥のパーティーのために上納された販売収入をいったん受け取った後、派閥はそのお金をノルマ分まで含めて改選と前後して参院議員側に還流したとの報道もあります」
これまでの「議員を処罰できない問題」と何が違うのか。
「長年の慣行で続けられてきたノルマ超過分の還流という“一般的なキックバック”と違い、特定の選挙に関して候補を支援する意図を持った寄付であることがポイントです。候補者には公職選挙法上、〈選挙運動費用収支報告書〉の〈収入の部〉の欄に〈寄付〉として記載する義務が生じます。特定の選挙に一つの報告書ですから、“本来記載すべき報告書”が確実に特定される」