裏金を「どこに記載すべき」だったかが特定しにくいという問題
ちょっと待ってほしい。裏金を受け取った事務所の会計責任者はもちろん、その“上司”である国会議員まで含めて起訴され、処罰されるのだろうと考えるのが国民の自然な感情だ。だが郷原氏によれば「高いハードルがある」という。
「政治資金規正法は、収支報告書に記載すべき内容を記入しない行為を虚偽記載罪として処罰する立て付けになっています。ところが派閥から還流してきた裏金は、“表に出さないお金”であるため、“どこに記載すべきだったのか”がはっきりしない。
国会議員は通常、資金管理団体のほか、自身が代表を務める政党支部、関連する政治団体など複数の“財布”を持っていますが、そのうちどの団体の収支報告書に記載すべきかが特定できないということです。特定できない以上、特定の収支報告書への記載義務に違反したという犯罪事実を構成しづらいのです」(郷原氏)
実際、4800万円の裏金を受け取った疑いがある安倍派の池田佳隆衆院議員は「党から清和会(安倍派)を通じて支払われる政策活動費と認識して記載していなかった」と弁解したが、これは「(現行法上、領収証の発行が必要ないとされる)政党から個人あての寄付であって、報告書への記載の必要はないと考えていた」という趣旨の言い逃れだ。派閥からのキックバックであれば「政党からの政策活動費」ではないにもかかわらず、起訴できない可能性があるというのが郷原氏の指摘だ。
郷原氏によれば、「会計責任者が全面的に非を認めて検察の思惑通りに自白する」といった例外的な状況に持ち込めなければ、受領側の議員を立件できない可能性が高いという。