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小林旭(85)が語る余生の計画 「300坪ある我が家をぶっ壊して『老人ホーム』を作りたい」

「これまで夢中になって芸能生活を駆け抜けた。もうやりきったよ」と語る小林旭

「これまで夢中になって芸能生活を駆け抜けた。もうやりきったよ」と語る小林旭

『仁義なき戦い』や『渡り鳥』シリーズで知られる銀幕スター・小林旭。昭和芸能の熱量を肌で知る数少ないレジェンド俳優は、現在85歳。スクリーンに圧倒的な存在感を焼き付けてきた「マイトガイ」が余生を楽しむために考えていることとは──。【全4回の第4回。第1回から読む

 * * *
 芸能界を見ていると、人間関係の希薄さも気がかりだ。

 俺の時代は裕ちゃん(石原裕次郎)や勝ちゃん(勝新太郎)、鶴さん(鶴田浩二)と腹を割って付き合えた。もう時効だから言うけど、裕ちゃんと銀座でボトルを何本も空けた後に「今から京都に行くか」と盛り上がり、それぞれ自分の車を運転して一睡もせず夜通し走って明け方に京都の先斗町に着いたことがある。それから京都にいる勝ちゃんと萬屋錦之介を呼び、芸者を引き連れてドンチャン騒ぎをしたもんだ。

 マスコミ連中ともよく一緒に遊んだ。昔は俺や裕ちゃん、勝ちゃんには新聞や雑誌の番記者が張り付いて、「渡り鳥一家」や「裕次郎一家」と呼ばれて、熱海の旅館を借り切って、それぞれの一家で新年会を開いて芸者遊びをしていた。翌朝、大広間に集まってお粥を食べながら前夜の芸者との一部始終を報告し合ったのが懐かしい。

 俺たちが背広のポケットに手を突っ込んだら「これは記事にするな」という合図で、お互いに暗黙の了解があった。楽しい時代だった。

 当時の俺は若造だったけど看板を競い合うことができたから、役者やスタッフ、マスコミとも深い関係を築くことができた。周りにもゆとりのある大人が多かった。濃密でザラついた人間関係が熱量になって、スクリーンに焼き付いていたんだ。

 ところが今はそういう空気は微塵もない。有名人も一般人もスマホばかりで自分の世界に閉じこもり、役者への憧憬の念が薄れて、自分本位にしか物事が考えられない奴ばかりになった。それでいて著名人が少しでも下手を打つと重箱の隅をつつくように寄ってたかって攻撃してくる。ミソもクソも一緒だよ。

 令和の芸能界には上っ面の付き合いばかりする連中が横行して、もう付き合いきれない。

 俺は真っ正直にしか生きられないし、嘘をついたり、冗談やお世辞を言ったりするのが苦手だから、裏表のある世界じゃ生きていけないんだ。

 2026年にデビュー70周年を迎えるけど、歌や映画はもういいと思っている。それよりも、俺のことを愛してくれる人のために貴重な時間を費やしたい。

 今考えているのは、300坪ある我が家をぶっ壊して、「老人ホーム」を作ることだ。養老院を建設して、そこに入居する老人たちと一緒に楽しい余生を送りたい。結構な金がかかるけど、すでに計画は進んでいるよ。

 幸いなことに85歳になっても身体は健康で、酒は10年くらい前にやめたけど、肉は昔と変わらず一日300グラムは食べている。

 これまで夢中になって芸能生活を駆け抜けた。もうやりきったよ。きらびやかなことは全部忘れて、人生の余韻をしみじみと感じながら余生を過ごせたら、それでいい。

(了。第1回から読む

※週刊ポスト2024年1月12・19日号

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