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蛯名正義・元騎手が語るダートの過酷さ「前を走っている馬が蹴り上げる砂が顔にかかると、とにかく痛いのなんのって」

蛯名厩舎の2023年振り返りと2024年への抱負について語る

蛯名正義氏がダート競馬の過酷さについて振り返る

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、「ダート競馬」についてお届けする。

 * * *
 冬場は芝保護の観点からダートの競馬が多くなります。これまでは芝レースの脇役のような印象だったかもしれませんが、今年から3歳の中央馬に「ダート三冠」という目標ができ、関心も高まっていきそうです。2023年12月29日に行なわれた東京大賞典の日には3万人近くの観衆が大井競馬場を訪れ、馬券の売上も83億円と地方競馬での新記録を達成。僕はテレビ中継に出演していましたが、その熱気はスタジオでも感じることができましたよ。

 ところで、ダート向きの馬とはどういう馬なのでしょうか。体型がごっつい馬がいいとか、スピード型よりパワー型だとか、前脚を掻きこむように走る馬がいいとか言われていますが、馬を見ただけでは分からない、というのが正直なところです。

 厩舎サイドから言えばさしあたっての拠り所は血統、父親がダート系種牡馬かどうかです。かつてはゴールドアリュールやクロフネなどダートで実績のあった馬が数多くの活躍馬を出しましたし、現在ならヘニーヒューズやシニスターミニスター、マジェスティックウォリアーなどで、これらの産駒を芝でデビューさせることはあまり考えないでしょうね。

 リーディングサイアーとなったドゥラメンテや、ロードカナロア、キズナなどもダートでの勝ち馬を多く出していますが、芝ではスピード不足だとかキレがないとか、あるいはワンペースだからというようなことで転向したのだと思います。当たり前のようですが、いい競馬をしたことで「ダートに向いている」という確信が生まれます。

 乗ってみれば適性はある程度分かります。芝で使っていた馬をジョッキーの進言でダートに変更することがありますが、それは芝のレースが終わって帰ってくる時に通ったダートコースの走り方がよかったと感じた時などです。馬券を買う側からすれば、ダート替わりしたばかりの馬はマークする必要があるかもしれません。ジョッキーの感性には説得力があると思います。

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