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SL復活で地域振興 岐阜の山間を走る明知鉄道の挑戦

1975年12月14日、最後のSL列車。北海道、室蘭-岩見沢(時事通信フォト)

1975年12月14日、最後のSL列車。北海道、室蘭-岩見沢(時事通信フォト)

 しかし、各地でSLが運転されるようになると目新しさは薄れる。さらに、SLに郷愁を抱かない世代、つまりSLの最盛期を知らない世代にとってSLは単なる昔の鉄道ぐらいの認識でしかない。こうした世代が増えてきたことで、SLの訴求力・集客力が低下している。

 こうした要因に加え、SLの運行にはボイラー技士の免許が必要になり、機関士・機関助士の育成も容易ではない。また、SLの車両は新造されることがないので、メンテナンスや部品交換には費用や手間がかかる。

 SLの運行を困難にしているのは、そうした鉄道会社の事情ばかりではない。近年は、沿線住民から「SLの汽笛がうるさい」「煙で家や洗濯物が汚れる」といった苦情も寄せられるようになり、しだいにSLは運行されなくなっている。

譲渡されたSLが2両

 SLが運行されなければ、当然ながら人気に陰りが出る。そこまでの手間をかけ、さらに運行そのものでは採算が取れないのに、なぜSLにこだわるのか?

「現時点において、SLを復活運転は検討段階というレベルです。今のところ年間100日ぐらいの運転を想定していますが、収支を黒字化することは難しいと考えています。しかし、SLの運行は採算面だけではなく、地域活性化といった効果もあります。明知鉄道は恵那市のほか中津川市も通りますが、中津川市には中央リニア新幹線の駅が開設される予定です。リニアが開業すれば、明知鉄道をはじめ地域にも大きな経済効果が見込めます。そうしたことも見据え、SLの復活運転は地域の観光資源になり得るのではないかと検討しているのです」(恵那市の交通政策課担当者)

 現在、明知鉄道の駅構内で実施されているSL運転体験は、コンプレッサーを使った空気圧縮という手法によって動かしている。しかし、現行法令では空気圧縮でSLを旅客運転することは認められていない。空気圧縮による運転は、あくまでも鉄道施設内や公園といった場所に限定される。旅客運転で復活させるには、きちんと蒸気で動かす必要がある。蒸気で動かすには、先述したように機関士・機関助士の養成といったクリアしなければならない課題が残っている。

 それでも恵那市をはじめとしたSL復元検討委員会は、本気でSLの運行を検討している。というのも、SL復元検討委員会はJR東海から2両のSLを譲渡してもらっているのだ。仮に、「SLを運行すれば、全国からファンを集客できる」と安易に考えていたら、わざわざ2両も譲渡してもらう必要はない。1両で十分だ。

「運転体験だけだったら、1両でも十分です。しかし、年間の旅客運転を100日と考えると、故障といった不測の事態も考慮して予備の車両を用意しなければなりません。そうした事情から、2両のSLを譲り受けました」(同)

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