山田孝之がフェイクドキュメンタリーに取り組み続ける理由
『東京都北区赤羽』『カンヌ映画祭』『元気を送るテレビ』と奇想天外な作品を世に送り出した山田孝之。超メジャーでスターと言っても過言ではない彼がなぜ率先してそういった作品に参加したのだろうか。
「これは本人に聞いてみないとわからないので、あくまでも想像ですけど、与えられた役を演じることへのストレスもあったと思うんですよね。それで自分の延長線上のものを演じることで発散していた部分もあったんじゃないかな。
山田くんが演じるフェイクドキュメンタリーに惹きつけられるのは、山田くんが半分“本気”だからだと思うんですよ。『元気を送るテレビ』のときも、3分の1くらいは本気で元気を送っていたのかもしれないし、『カンヌ』の時も20パーセントくらいは本気で賞を狙っていたのかもしれない。自分の言葉で自分の考えで動くことは、役者として解放感があったんじゃないですかね。
結局、『赤羽』も『カンヌ』も『元気を送るテレビ』も全部剥がしていくと、男の子の悪戯なんですよね。驚かせて笑わせたいという純粋な思いでしかない。その純度が一番高いのが山田くん。男子が集まってみんなを騙そうぜっていう気概で動いていた感じがしますね。それに(放送が)テレビ東京の深夜というのが一番マッチしたんだと思います」(山下)
大半のテレビ番組は「“万人に愛され病”にかかっている」
山下は『山田孝之』シリーズ以降、フェイクドキュメンタリー的作品は「自分自身はもういいかな」と思いほとんど作っていないのに対し、竹村は、斎藤工主演の『MASKMEN』、蒼井優主演の『このマンガがすごい!』(ともに2018年、テレビ東京)、TEAM NACSによる『がんばれ!TEAM NACS』、眞栄田郷敦・綾野剛による『キン肉マン THE LOST LEGEND』(ともに2021年、WOWOW)、ダウ90000の『ダウってポン!』(2023年、Paravi)と精力的に作り続けている。
「テレビって歴史が長いんで、どうしても既製品で作られているんですよね。こういうセットで、コメンテーターがいて、ワイプでリアクションして、みたいなフォーマットができてしまっている。
せっかく人と違うことをやって褒められる職業なのに、みんな同じことをやっているなと。僕はフジテレビの深夜黄金時代の番組を見てテレビをやりたいと思った人間です。あの頃の番組は1個1個がぜんぜん違うフォーマットで“何なんだこの番組?”っていうのがいっぱいあったんですよ。
でも、いざテレビ業界に入ってみると既製品ばっかりで“万人に愛され病”にかかっている。既製品だから、視聴者もどうせここでCMでしょ、みたいにCMのタイミングがわかるくらい、万人にわかるようにできている。考えなくても見れるというか。それが僕の中でつまらなくて、それを解消する一つの方法としてフェイクドキュメンタリーをやっているというのはありますね」(竹村)