1984年、パソコン教室で熱中する母子たち。キーボードの向こう側に見えるのが、カセットテープを記録媒体として読み込むデータレコーダ(時事通信フォト)

1984年、パソコン教室で熱中する母子たち。キーボードの向こう側に見えるのが、カセットテープを記録媒体として読み込むデータレコーダ(時事通信フォト)

 つまるところ個々人の問題とはいえ外的要因がなければ日々の業務、なかなか移行しようにもしづらい、あるいはしたくない、という事情もあるように思う。

 ちなみにフロッピーに限った話ではないが記憶媒体も当然劣化するし、腐る(とくに5インチ)。保存環境にもよるが買い置きが全滅、という事態もありえる。それでも使い慣れたものから離れるのはなかなか踏ん切りがつかない人、あるいは組織もあるだろう。
 
「親指シフトも入力が速かったから使ったわけですし、MOもMacのFireWire(接続ケーブル、USB2.0より速かった)が速かったからMOだったんですよね」

 彼はパソコン誌の編集者だったこともある。界隈の話だが、出版業界ではこのMOディスクが2000年代まで入稿の主役であった。

「MO、230MBとか640MBは当時としては使いやすい容量だったように思います。雑誌のページごとに入稿するにはちょうど良かった。音楽関係や建築関係(CADなど)でMOを使っていたのもそういう理由でしょう。フロッピーもテキストだけ入稿するのにちょうど良かった。でも、いまやクラウドに上げるだけですからね」

パソコンが当たり前な世代が高齢者に

 1990年代初頭はフロッピー1枚のためにバイク便を頼んで印刷所まで走ってもらったことがあった。パソコン通信(インターネットではない)の環境のないライターの自宅の最寄り駅までフロッピー1枚を取りに行ったこともあった。

 およそ30年前の話だが、そう考えればフロッピー、信頼性のある息の長いメディアだったと思う。思えば普及し始めた1980年代、データレコーダというカセットテープにデータを記録する装置で何十分も待ってパソコンゲームをしていたのがフロッピーによって数秒でゲームができるようになった、その感動の思い出だけが残ったということか。

「ファミコンみたいな瞬時にデータを読んでくれるROMカートリッジもありましたけど、世代的にはパソコンゲームは「大人のゲーム」って感じでしたよね。それがフロッピーだと瞬時にできるって、すごく高価でしたけど、感動でしたね」

 世代によってさまざまだろうが、記録媒体とはそういった思い出の記録であったようにも思う。もっとも、実務や生活だともはや厳しいというか、こうして社会的に退場を迫られてしまうのだろう。

 海外でも数年前まで核ミサイル施設で8インチのフロッピーが使われていたとか、旧型の旅客機に3.5インチフロッピーが使われていたとか話題になったが、それも退役含め、徐々に改められてきた。

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