芸の礎は純文学と『GON!』
比嘉:ヤンキーと普通の子との距離が近かった時代ですよね。一之輔さんの落語好きはその頃から?
一之輔:初めて寄席に行ったのは、確かに高校の時です。ただ、当時は落語に限らずいろいろ観たり読んだりしてましたね。『こころ』とか『坊っちゃん』とか、とりあえず国語便覧に出てくる作品を片っ端から古本屋で買って読んだり。それこそ、比嘉さんが『ティーンズロード』の次に立ち上げたサブカル雑誌の『GON!』も愛読してましたよ。
比嘉:純文学と『GON!』を同時進行で……(苦笑)。アンダーカルチャー的なものも好きだったんですね。
一之輔:当時はそういうのを読むことで“いきがる”部分もあったんでしょうね。俺は周りが知らないようなことも知ってるんだぞ、っていう。いま思うと何がかっこいいのかわからないけど(笑)。でもあの頃の学生、そういう奴が多かったんじゃないかな。大学の落研の部室にも、よくああいう雑誌が転がってました。
比嘉:自慢するわけじゃないですが、『GON!』は最初から売れたんですよ。創刊号は13万部、最盛期で25万部いきましたから。でも当初はこれが売れるなんて、だれも信じてなかった(笑)。
一之輔:だって「89歳の暴走ばあさん」なんて記事がありましたけど、どうみてもインチキだったもん(笑)。
比嘉:まあ、多少演出はしました。ライターのお姉さんをメイクしたんだけど、メイクだけだと全然おばあちゃんに見えなくて。当時出たばっかりのパソコンでシワを書き加えて……。
一之輔:こっちも嘘だとわかっていて読むわけだし、そういう虚実楽しむのがよかった。
比嘉:ただ、雑誌が出た後にテレビやラジオの人から「あの暴走ばあさんにインタビューしたいから紹介してくれ」と言われたのは困った。