黒田:小雪さんは現場に入られた時からトミという女性になり切ってはったと思うので、威圧感がありましたね。社長に対して、僕がスズ子とボンの交際を認めるように説得する長ゼリフのシーンでは、僕が失敗すると社長が怒るわけではないのですが、現場の雰囲気が緊迫してきてどんどん焦りが出てくるんですよ。でもそれが良い方向に働いたみたいで、僕の白目の部分が勝手に充血して赤くなっていて、「あのシーンはリアルだった」と褒めてもらったんです。けどあれは演技したわけじゃなくて、本当に焦っていたんですよ(笑)。
近藤:僕も社長に、スズ子とボンの結婚を認めてほしいと頼みに行くシーンで “ちょっと集中できてない感じがするな”となって、自分から撮影を止めてもらったんですよ。小雪さんにも「ごめんなさい」と謝りましたが、「いえいえ全然」みたいな感じでドンと受け止めてくださって、やはり貫禄がありましたね。
黒田:あぁ、そのシーンの前に、山下さんが「ワシが社長に言いに行く!」と言って、坂口が「でも山下さん、社長にめっちゃ嫌われてるじゃないですか」という場面がありましたよね。もともとの僕のセリフは「社長に“ごっつ”嫌われているじゃないですか」。でも僕ら大阪人からすると“ごっつ”というのは馬鹿にしたり、笑いを取るニュアンスの言葉なんですよ。
近藤:本当の意味がね。
黒田:真剣なシーンだったけど、僕が自分のセリフに笑いが止まらなくなって何回もNGを出してしもうてね。それで現場の雰囲気が悪くなって、僕は「申し訳ございません、“めっちゃ”に変えてもらえませんか?」とお願いしたんです。あの時は趣里ちゃんにすごく睨まれたのを覚えていますよ(笑)。泣きに入るシーンでしたからね。趣里ちゃんにも近藤さんにもこの場を借りてほんまお詫びします(頭を下げる)。
近藤:そんなこともありましたね(笑)。小雪さんは健康にすごく気を使われていて現場に自家製トマトジュースとか、燕の巣のゼリーとかを差し入れてくれました。めっちゃ美味しかったですね。