また弘道会だけが肥大化すれば派閥も生まれる。次世代の支配者が弘道会の竹内照明三代目会長なのは絶対の既定路線だ。その後も高山若頭の出身母体から選ばれるだろう。弘道会はこうした序列を頑なに死守する。
ならば分裂抗争の最前線で奮闘した弘道会ナンバー2の野内正博・野内組組長はどう処遇されるのか。かつて栄華を誇った山健組では、跡目のライバルになり得る実力派組長らが一本立ちさせられた。野内組長も弘道会を飛び出て直参組長となるのだろうか。
高山若頭は76歳という高齢で、持病を抱えている。潤沢な時間はない。当人は親分を支え続けた黒子でいいと思っているかもしれない。が、御輿の担ぎ手は七代目山口組の座を希求するはずだ。トラブルの種はあちこちにある。なにより、山口組のすべてが高山若頭に収斂しているのだ。
もし竹内会長が後任となった場合、不満分子を抑え込めるかは未知数である。
終戦に同意しない離脱派組長たちも、おそらくそれを待っている。
山口組の試練はまだまだ続く。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年北海道生まれ。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。
※週刊ポスト2024年3月29日号