国際情報

尖閣諸島は歴史的にも国際法的にも日本の領土である根拠集

 竹島が韓国に実効支配され、尖閣諸島も中国に掠め取られそうである。日本の領土が危ない。尖閣諸島を狙う中国に日本はどう立ち向かえばいいのか。だが、そもそも尖閣諸島は歴史的にも国際法的にも日本の領土である――そう説明するのは杏林大学名誉教授の田久保忠衛氏だ。

******************************

 歴史的事実として、日清戦争が起こる10年前の1885年以降、日本政府は再三再四にわたって尖閣諸島を調査した。その結果2つのことを確認している。1つは無人島であること、2つめは清国の支配が及んでいないこと。この2点を確認したうえで、1895年1月14日の閣議決定により、標杭を建設して尖閣諸島は日本の領土に編入された。

 これは「無主先占の法理」といい「いずれの国の領域でもない地域に対して、国家がこれを自国領土とする意思を明示して、かつ実際上の支配を行なう時、国際法はこの事実に効果を付して、該国家に領土権を与える。これを先占と称する。単なる領有意思だけでは不十分で、実効支配を必要とする」(一又正雄『国際法講義』)とされている。つまり、日本が尖閣諸島を領土に編入したことは国際法に則った行動なのである。

 そして日清戦争(1894-95年)後の下関条約(1895年4月)で領土に関する取り決めが行なわれ、日本は台湾・澎湖諸島まで領有することになった。この時の取り決めには日本が放棄する地域にも取得した地域にも、尖閣諸島は入っていなかったのである。

【国際的にも認知されている日本の尖閣諸島領有権】

 1945年、第2次世界大戦に敗戦、連合軍の占領下となった日本は、1951年のサンフランシスコ講和条約で独立する。このサンフランシスコ講和条約第2章「領域」の第2条[領土の放棄]bに「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」とある。下関条約で領有した台湾・澎湖諸島を日本は放棄した。しかし、ここに尖閣諸島は含まれていない。

 さらに第3条[信託統治]の項には「日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する」と述べている。当時の米琉球民政府(USCAR)は1953年に出した布告27号で、「北緯二十九度以南の南西諸島」には尖閣諸島を含むことを示す境界を明らかにした。

 尖閣諸島もサンフランシスコ講和条約発効と同時に信託統治されたのだ。そして1971年6月17日署名の「琉球諸島および大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)」によって日本に沖縄が返還された。その地域の中に尖閣諸島も含まれている。

 71年10月27-29日の3日間にわたり沖縄返還協定に関する公聴会が米上院外交委員会で開かれた。最終日の29日にテキサス州ダラスの調査会社、ライス&ライス社のロバート・モリス氏が証言した際に提出したロバート・I・スター国務省法律顧問代理(東アジア・太平洋担当)の71年10月20日付公式文書がある。

 同文書は北緯29度以南の「南西諸島」に尖閣諸島が含まれていることを確認したうえで、「米国は同諸島に何らの要求も持っておらず、同諸島に対する相反する要求は関係諸国によって解決されるべき問題と考える」と中立の立場を鮮明にしている。沖縄は1972年に日本に返還され、尖閣諸島の領有権が日本に戻ったことは米国も当然と見ている。

※SAPIO2010年11月10日号

関連キーワード

トピックス

永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン