国際情報

「ゆすり」発言で米政府が普天間問題こじらせたこと明らかに

 沖縄ではケビン・メア米国務省日本部長の「侮蔑発言」への抗議運動が大きく広がり、メア氏は更迭された。新聞は、〈沖縄蔑視の発言か〉(読売)、〈沖縄への許し難い偏見〉(朝日)と、沖縄限定の問題に矮小化して報じたが、発言全文を読むと決してそうではない。

 メア氏は昨年12月3日、沖縄に研修旅行に行く予定のアメリカン大学の学生14人に国務省内で特別講義を行ない、次のように語った。

〈日本の「和(調和)」を重んずる文化は意見の一致に基づいている。(中略)彼らは「合意」の文化を「ゆすり」の手段に使っている。合意を模索するとみせかけ、できるだけお金を引き出そうとするのだ〉(『琉球新報』が報じた講義メモ全文より)

 メア氏は米ジョージア大学卒業後、国務省に入省、駐日公使、沖縄総領事などを歴任した職業外交官だ。小泉内閣の2006年には駐日米大使館安全保障部長として普天間基地の辺野古移設という日米合意に関わった。

 沖縄総領事時代には、その傍若無人な言動で「米国占領下の高等弁務官」の異名を取った。米兵による女子中学生レイプ事件(2008年2月)の渦中に、県民の抗議行動を無視して食事に行き、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故では県警の捜査を、「何を調査したいか疑問だ」と批判。2009年4月には、米軍艦船寄港反対の横断幕がひそかに撤去されたことを「ゴミを片づけただけではないか」と発言して県民感情を逆撫でし、領事館隣のカフェで客からコーヒーを浴びせられた。

 しかし、今回のメア氏の最大の問題は前述の部分ではない。講義の最後に語った本音こそが、米国の思惑を端的に表わしている。

〈私は、日本国憲法の9条が変わるべきだと思わない。(中略)改憲したのなら、米国にとってよくないことだ。日本政府が現在、支払っている高いホストネーションサポート(思いやり予算・編集部注)は米国にとって有益だ。私たち米国は日本に関して非常によい取引を得ている〉

 今まで米国の都合だけで憲法を押し付けてきたこと、普天間移設交渉をこじらせてカネを出させてきたのは日本でも沖縄でもなく、実は米国政府だということを国務省の日本部長が白状したのだ。

 それでも、米国に“洗脳”された大メディアは、保守系の産経、読売、左派の朝日まで批判しなかった。ある記者など、「あれは日本や沖縄ではなく、民主党への不満を述べただけ」と見当違いの擁護をした。

 菅政権の対応も臭いものにフタだ。ロシア大統領の北方領土訪問を「許し難い暴挙」と口を極めて批判した菅首相は、メア発言には「遺憾なこと」と腰がひけた言い方に終始し、尖閣問題で中国を「悪しき隣人」と言い切った枝野幸男・官房長官も、今回は「一つ一つの発言を確認する必要はない」と米国に真偽確認の要請さえしていない。

※週刊ポスト2011年3月25日号

関連記事

トピックス

行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン