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2011.06.20 07:00  週刊ポスト

民主主義の原則「一人一票」に対立する投票法の画期性とは

 現状の選挙制度では、数の多い老人の声が優先され、世代間格差は広まる一方だ。そこで若者の声が政治に届くようにするために「年齢別選挙区」の導入をはかるべきだとの意見も出ている。これは人口の構成比に応じて議席を配分するというものだ。

 暴論にも思えるが、実は日本と同じく世代間格差が問題となっている諸外国でも選挙制度改革が検討されている。

 例えば、ハンガリーでは、親の声を反映させる「ドメイン投票法」という投票制度の導入が、目下検討されているところだ。ドメイン投票法とは、ハンガリー出身の人口統計学者、ポール・ドメイン教授が提唱する選挙制度だ。民主政治において投票者が高齢化すると、若者世代の将来に無関心になりがちで、それを是正するために考案したという。実際には子供に1票を与え、それを親が代行して投票する。夫婦で子供が2人いれば、親は1票ずつ余分に投票できることになるわけだ。

 ドイツでもドメイン投票法の導入法案が2005年と2008年に議会に提出され審議された。ただ、親が子供の票をもつとなると民主主義の根幹である1人1票の原則に反し、投票の秘密も守れないという観点から2度とも否決されている。

 世代間格差問題を研究する青木玲子・一橋大学教授は、ドメイン投票法が注目されている理由をこう語る。

「ドイツやハンガリーも日本と同様、出生率が低く社会保障の負担が若い世代にのしかかっています。ですから、子供をもつ若い世代の意思を政治に反映させるために提案されたわけですが、理由はそれだけではありません。ドメイン教授は、子供の1票を母親がもつことで母親の発言権が増し、母親にフレンドリーな政策が実現し、出生率が上がると考えたのです」

 しかし、いくら親が説明したとしても、子供に政治的な判断ができるのだろうか。ドメイン投票法に賛成する『「若者奴隷」時代』著者の山野車輪氏はこういう。

「ぶっちゃけ、子供の意見は反映されなくてもいいんです。20歳未満というのは親が管理しないといけないわけですから、親が子供の将来を考えて、責任もって投票すればいいだけです」

 そうはいっても、1人1票というのは民主主義の大原則であり、1人で何票ももつ人が出てくることには、不公平感を感じる人も出てくるはずである。この疑問に対して、青木教授はこう答える。

「民主主義のあり方を考え直すべき時期に来ていると思います。民主主義が始まったギリシアでは、当初、投票できるのはごく一部のお金持ちだけで、アメリカでも昔は所得制限があり、男性しか投票できなかった。それが段階的に無産階級に広がり、20世紀になって女性にも権利が拡大した。今は、これまで経験したことのないような超高齢化社会に突入し、それに伴って世代間格差が広がるなど、世の中が変わっているのに、制度が追いついていないのです」

※週刊ポスト2011年7月1日号

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